成長期の子犬はたくさんのエネルギーを必要としているため、本来ならば食欲おうせいなもの。ご飯を食べない・残すということがあれば、必ず理由があります。
子犬はカラダも小さく、成犬とくらべると体力も少ないため、ご飯を食べない状態が続くと衰弱してしまいます。空腹が続けばエネルギー不足となり低血糖症をおこしてしまうこともあるため注意が必要です。
今回は2ヶ月や3ヶ月の子犬がご飯を食べない原因と対処法をくわしくご紹介したいと思います!
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/動物取扱責任者/犬の管理栄養士/ペットフードアドバイザー1級/少額短期保険募集人
第一種動物取扱業:第225818003号 保管 動物取扱責任者:山本星海
JKC公認トリマー養成機関卒業。Dog salon Star seaを2018年に開業、犬のトリミングやドッグフードの販売を行う。トリマー歴10年目。愛犬:トイプードル2匹
【子犬がご飯を食べない理由➀】ストレスが原因
心理的ストレス
子犬があなたのお家にやってきて、まだ日が浅いのであれば“ニューオーナーシンドローム”かもしれません。“ニューオーナーシンドローム”とは新しい飼い主のもとにやってきた子犬が、環境の変化による不安やストレスから、食欲がなくなったり、下痢や嘔吐をしてしまうことです。
人間でも引っ越しなど、まわりの環境がかわることはストレスになりますよね。新しいお家にやってきた子犬は、元気そうにみえても大きなストレスを感じています。愛らしい子犬の姿をみると、抱っこしたり一緒にあそびたくなりますが、初めの1週間はスキンシップはひかえめに。
生後3ヵ月の子犬は1日16~17時間の睡眠が必要だと言われています。静かな環境のなかで安心して眠れるようにしてあげましょう。
また、犬はさみしがりやな動物です。長時間のお留守番は犬にとってつらいもの。可能なかぎり、そばにいる時間をつくってあげてくださいね。
環境的ストレス
子犬が過ごす空間が快適であるか、もういちど確認してみましょう。犬は人とちがって全身に汗線がないため暑さによわい動物です。室温は25度前後が適温といわれています。子犬の使うケージやハウスは直射日光のあたらない部屋の隅におくのがベスト。
反対に寒い冬はペット用の暖房シートを使用したり、毛布をおいてあげるなど子犬が風邪をひかないようにしてあげましょう。犬も人と同じでふわふわな肌触りのものが大好きです。
犬は大きな音が苦手なため、ケージやハウスをテレビのすぐそばにおくことも避けます。大きな声で叱るのもストレスになってしまうのでやめましょう。
犬も人とおなじでストレスによって食欲がなくなることがあります。ストレスは愛犬のこころやカラダのさまざまな不調の原因に。できるがぎりとりのぞいてあげましょう。
※食欲不振の他に元気がなくグッタリしている、下痢や嘔吐がみられる場合は病気の可能性もあるので早めに動物病院を受診してください。
【子犬がご飯を食べない理由➁】お腹がすいていない
ごはんの量が多い
「だいたいこのくらいかな?」と目分量でフードをあたえていませんか?食べすぎを防ぐためにも、フードのパッケージに記載されている基本量をはかってあたえましょう。
小型犬を例にすると、フードが30グラムと40グラムでは食事量が3割も増える計算になります。
おやつのあたえすぎ
ジャーキー、クッキー、チーズ、ガムなど…ペットコーナーには色々な種類の犬用のおやつが売られています。おやつは食いつきが良いですし、愛犬の喜ぶ姿を想像するとついついあたえたくなってしまいます。
おやつのあたえすぎはフードを食べない原因となるので、注意が必要です。おやつをあたえる時は犬が1日に必要としているカロリーの10~20%ていどにおさえましょう。
(犬が1日に必要としているカロリーは、体重・月齢によって異なるため、獣医さんに聞くと安心です)
犬はおやつの量が多いことよりも回数が多いほうが満足するので、ハサミなどでカットしたりして数回にわけてあたえるのがおすすめ。おやつをあたえた時は、その分主食のドックフードを減らします。子犬がフードを食べなくなった時は、おやつを与えるのをいったんストップします。
運動不足
子犬がワクチン接種をおえていて獣医さんから許可がでているならば積極的にお散歩につれて行ってあげましょう。外の空気をすうことで犬もストレス解消になりますし、運動をすることでお腹がすいてご飯をよく食べるようになります。
お散歩に行けないときは、お家の中で一緒にあそんであげましょう。犬はボール遊びやおもちゃの引っぱりっこが大好き。子犬とのいいコミュニケーションにもなりますね。
【子犬がご飯を食べない理由③】ご飯が食べづらい・おいしくない
子犬には子犬用のフードを
ドライフードの場合、粒の大きさが子犬のサイズにあっていない場合があります。粒の大きなものをあたえているならば、粒の小さい子犬専用フードに変えてあげましょう。
子犬専用のフードは効率よく栄養が取れるように作られています。犬も年齢によって必要なカロリーや栄養素が変わってくるもの。子犬は成犬と比べて約2倍のカロリー、人間と比べて約4倍のカルシウムとたんぱく質が必要だといわれています(※同じ体重で計算した場合)子犬には子犬専用のフードをあたえるのがいいと思います。
また子犬用でなくとも安全性と栄養価の高いフードもあるのでそちらもおすすめです。栄養価が高い子犬用フードは小・中型犬だと1歳くらいまでと言われています。大型犬の場合は小・中型犬に比べて成長がゆっくりなため18ヶ月を目安に成犬用フードに移行します。
1日の食事の回数は
生後3ヶ月までは1日4回、6ヶ月までは3回、それ以降は2回を目安にあたえます。
子犬がご飯をのこしたときは、そのまま食器を放置せずに、10分ほどしたら片付けます。ご飯を完食したときは「えらいね」とやさしく褒めてあげましょう。
フードをふやかす
これは子犬だけではなく成犬にも有効な手段です。
生後2~3ヶ月までは胃腸の働きが未熟なため、ドライフードをお湯か犬用ミルクでふやかしてからあたえます。子犬の離乳食ですね。お湯、犬用ミルクの温度が熱すぎるとフードの栄養素を壊してしまうため50℃以下に温めたものでふやかします。
生後3ヶ月を過ぎたころから少しづつフードの堅さを調整していきますが、子犬がフードを食べなくなったときには再び水分量をふやして様子をみます。これは生後3ヶ月未満の子犬以外にも、犬が体調不良などで食欲のない場合にもよくつかわれる方法。
犬は人の100万倍も鼻が良いため、ふやかすことによってフードの匂いが強まり食欲が増すといわれています。
【子犬がご飯を食べない理由④】子犬が発症しやすい低血糖症
低血糖症とは?
子犬がご飯を食べない原因のひとつとして、低血糖症が考えられます。低血糖症とは血液中のブドウ糖がたりなくなることで、脳がエネルギー不足におちいってしまうこと。肝臓の機能が未熟な2~3ヶ月未満の子犬に多くみられる症状で、大型犬よりも小型犬の子犬のほうが発生しやすいといわれています。
新しいお家にきたばかりで、子犬が不安や緊張からご飯を食べる量が減ったり、下痢をしている場合は要注意。子犬は体内の糖分のたくわえが少ないため、1食抜いただけで低血糖の症状があらわれる場合も。
ご飯を食べない、歩行時にふらつく、ボーっとしている、眠っている時間がふえる、吐く、下痢などの症状がみられたら低血糖症をおこしている可能性があります。
重症になると意識レベルが低下し、けいれん発作をおこします。発作が5分以上続くと命にかかわるため、初期の段階で気づいて対処することが重要です。
低血糖症の対処法
子犬が低血糖症を発症した場合、すぐに血糖値をあげる必要があります。砂糖水(ぬるま湯で溶かしたもの)を舌の上に少しずつたらして舐めさせます。ハチミツを使う場合もあるようですが、免疫力が弱っているときなど、まれにボツリヌス症を起こす可能性があるため注意が必要。砂糖水の方が安心です。
口を開けられない場合は砂糖水を指で歯茎にぬっても効果があります。子犬の体調が良くならないときは、すぐに動物病院を受診してください。元気になった場合も再発の可能性があるため、獣医さんに診てもらったほうが安心です。
動物病院で低血糖症の診断をうける子犬は、新しいお家へやってきて1週間以内に発症する子が多いと言われています。環境の変化によるストレスは、食欲を低下させ低血糖症を引きおこす原因に。子犬が新しいお家になれるまでは、眠っていることろを起こしたりせずに優しく見守ることが大切です。
子犬がストレスで食欲が落ちた場合は、犬用の粉ミルクを少しだけフードに混ぜこむことで食べてくれることがあります。空腹の状態が続かないように、子犬の様子をよく観察し対処してあげましょう。
【子犬がご飯を食べない理由⑤】誤飲誤食してしまった
1歳未満の子犬に多い誤飲誤食。
子犬の胃や腸の中に異物がある場合にも、ご飯を食べなくなることがあります。
おもちゃのボールやぬいぐるみ、床におちていたボタン電池や人間用のクスリ。子犬は口に入るものなら何でも食べてしまう可能性があるので注意が必要。犬用のおやつであっても丸飲みしてしまうことで、腸内に詰まってしまいキケンな状態になることがあります。
その場合は食欲不振だけではなく、嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの症状が一緒にあらわれることが多いです。子犬に上記のような症状があらわれた場合は早めに動物病院を受診しましょう。
誤飲誤食をした場合、食べてしまったものが腸につまる可能性のないとき・カラダに害がないときはウンチと一緒に出てくるのを待ちますが、場合によっては催吐薬で吐かせる、内視鏡又は手術で摘出するなどの処置をおこなう必要があります。
犬が誤飲誤食しやすいもの
- おもちゃの破片
- 大きめの犬用ジャーキー
- 犬ガムのかたまり
- トウモロコシの芯
- 果物の種
- 糸やヒモ
- 小石
- 乾燥剤
- アイスの棒
- 食品の匂いのついた使用済みのラップ
などがあげられます。
犬が食べてはいけないもの
食べ物の中には子犬が口にするとキケンなものがたくさんあります。
- チョコレート
- ココア
- 鶏肉の骨
- 生の豚肉
- イカやエビなどの甲殻類
- トマトのヘタ
- アボカド
- ネギ類
- ニラ
- 生の卵白
- ぶどう
- 香辛料
- アルコール
- キシリトール入りのガム
上記にあげたものは与えてはいけません。食べ物の他にも、植物にも注意が必要です。
ポインセチア、ポトス、チューリップ、ヒアシンス、アロエ、シクラメン、ユリ科の植物。これらも、犬にとって毒になる成分がふくまれています。重症になると死んでしまうこともあるため、子犬が口にしないうよう気をつけてあげてくださいね。
子犬の食欲アップ!正しいご飯の保存方法を知ろう!
フードは劣化しやすい
元気もあって、お腹もすいているのに子犬がご飯を食べない場合は、フードが湿気ていたり痛んでいる可能性があります。ドックフードが痛んでいるかどうかはぱっと見では分かりずらいもの。
痛んだフードを犬にあたえると食中毒などの危険があります。
また、ドライフードには油がたくさん使われているため、空気にふれると“酸化”してしまいます。酸化したドックフードは美味しくないのはもちろん、「動脈硬化」「胃腸炎」「アレルギー」「がん」「心筋梗塞」「皮膚炎」「老化促進」など原因に。
最近では人工の酸化防止剤、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)やBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を使用していないナチュラルフードやオーガニックフードに注目があつまっています。
BHAやBHTを使用していないフードは犬のカラダにやさしく飼い主としても安心してあたえることができますが、酸化しやすいといったデメリットがあります。
正しいドックフードの保存方法をしって、愛犬の健康を守ってあげましょう。
ドライフードの保存方法
ドックフードは開封から1ヶ月以内に使い切ります。賞味期限が切れていないか必ずチェックしましょう。大袋のものより小分けパックになっているものの方が安心です。ベストなのは、1日分を小分けにして真空パックする方法(家庭用の真空パック器は3000円~購入することができます)
真空パックしたフードをフードストッカーに入れて冷暗所におくのが1番安心ですが、真空パック器がない場合は、ジッパー付きの保存袋にフードを乾燥剤と一緒に入れて冷暗所に保管します。乾燥剤は犬が口にすると、とても危険なので一緒にあたえないように気をつけてくださいね。
ジッパー付きの保存袋以外に、ダイヤル式の真空保存容器も便利です。ドライフードは冷蔵庫に入れると出し入れした際に結露し、カビの原因になることがあるので冷暗所で保管します。
子犬が食べ残したものは、保管せずに捨ててしまうのが安全です。とくにお湯や犬用ミルクでふやかしたものは痛みやすいため、長時間放置しないように気をつけてください。
ウェットフードの保管方法
ウェットフードはドライフードに比べて水分が多く傷みやすいため、開封したら2日以内に使い切りましょう。保存する際は、密閉容器に移しかえて冷蔵庫で保管します。ラップで包んでもOKです。
ウェットフード用のプラスチック製のキャップ(蓋)を使用すると便利ですが、その場合は缶のサイズにあったものを使ってください。
子犬のご飯を変えてみる
愛犬の好きなフードを見つける
健康に問題がなく、フードもきちんと保管しているのに子犬がご飯を食べない場合は、単純に今食べているフードが好みではない場合があります。
人にも食の好みがあるように、犬にも好きなフードと嫌いなフードがあります。子犬用のフードもさまざまな種類が売られていますね。子犬の様子をみて、今のドックフードがあまりにも食いつきがわるいようでしたら別のものに変えてみても良いでしょう。
フードを選ぶときの注意点
ウェットフードはドライフードに比べて匂いもつよく犬が好む傾向にありますが、一般的に使われているのはリーズナブルで日持ちのするドライフードです。
どちらにもメリット・デメリットがありますので「必ずコレじゃなきゃダメ!」ということはありません。飼い主さんがよく考えた上でベストなものを選んであげましょう。
市販のドックフードを選ぶときは必ず「総合栄養食」と表記されているものを選びましょう。「総合栄養食」と表記されているドックフードは、ペットフード公正取引協議会が犬が必要としている栄養基準を満たしていることを証明したフードです。
ただ輸入しているドッグフードなどで基準を満たしていても総合栄養食と表記されていない場合もあるので注意です。栄養的にはフードと水だけで愛犬の健康が維持できるといわれているものです。
もうひとつ、しっかりと確認したいのが“原材料”。使われている肉の種類が「牛」「豚」などしっかりと記載されているものを選びましょう。
原材料は使用量の多いものから書かれています。
犬は肉食よりの雑食ですので、穀物よりも肉類が多く使われているものの方が、犬の胃腸の負担をへらすことができます。
ペットフードに使われている着色料のなかには、発がん性があるものやアレルギーの原因になるものがあるので、なるべく使用されていないものが良いでしょう。
まとめ
子犬期の食事は、健康なカラダの基礎をつくるためにとても大切です。
大切な子犬がこれからも、あなたのそばで元気に幸せに暮らせるように、家族として愛犬のサポートをしてあげてくださいね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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