濃厚でクリーミーな味わいが特徴のアボカド。
栄養価が高く好んで食べる人も多い食べ物ですが、犬が食べると健康問題を引き起こす可能性があるため、与えてはいけません。
この記事では、犬にアボカドを与えてはいけない理由や出る可能性のある症状、食べてしまったときの対処法や誤食を防ぐ方法について解説します。
後半では「アボカドを使ったドッグフードの安全性は?」「加熱すれば大丈夫なの?」など、よくある疑問もまとめているので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/動物取扱責任者/犬の管理栄養士/ペットフードアドバイザー1級/少額短期保険募集人
第一種動物取扱業:第225818003号 保管 動物取扱責任者:山本星海
JKC公認トリマー養成機関卒業。Dog salon Star seaを2018年に開業、犬のトリミングやドッグフードの販売を行う。トリマー歴10年目。愛犬:トイプードル2匹
アボカドは犬に与えないほうが良い
アボカドにはビタミンやミネラルなど多くの栄養素が含まれており、「世界一栄養価の高い果物」としてギネスにも認定されています。
そのため、これだけ体に良いなら愛犬にもあげたいと思う方も多いでしょう。
しかし、アボカドには動物にとって良くない成分が含まれており、食べた量によっては体調を崩す可能性があるといわれています。
特に種や皮、葉は有毒性が高いといわれているため、犬が誤って口にしないよう注意が必要です。
人間が普通に食べているものの中には、ペットにとって良くないものもたくさんあります。
犬用以外の食べ物を愛犬に与えたいと思ったときは、かかりつけの獣医師に相談したりインターネットで調べたりして、犬に与えても問題ないかどうか確認するようにしましょう。
犬にアボカドを与えないほうが良い理由と主な症状
アボカドが犬に良くないといわれるのは、「有害な成分が含まれているから」というだけではありません。
中毒が起こらなかったとしても、場合によっては命にかかわる状態になってしまう可能性もあります。
ここでは、犬にアボカドを与えるリスクと症状を紹介します。
ペルシン中毒を起こす可能性がある
アボカドに含まれる「ペルシン」という成分には強力な殺菌作用があり、摂取すると嘔吐や下痢、胃腸炎、呼吸困難、心筋障害などを起こす可能性があります。
動物では、牛や馬、鳥、うさぎなどさまざまな生き物への中毒性が確認されており、なかには命を落とす例も。
特に鳥はペルシンに対する感受性が高く、少し口にしただけでも危険です。
なお、犬はほかの動物よりペルシンへの抵抗力が強いという説があり、犬のアボカド中毒の正確な報告はまだありません。
そのため、アボカドの危険性については専門家でも意見が分かれていますが、100%安全という確認が取れていない以上与えるのは避けたほうが良いでしょう。
アボカドの摂取に限らず、愛犬の命を守れるのは自分だけという意識を常に持っておくことが大切です。
肥満や急性膵炎、糖尿病のリスクが高まる
アボカドは「森のバター」と呼ばれるほど高脂肪・高カロリーな食べ物です。
そのため、頻繁に与えていると太りやすくなり、糖尿病など特定の病気のリスクが高まります。
また、犬によってはアボカドの脂肪分が原因で便が緩くなったり、急性膵炎を引き起こしたりするかもしれません。
膵炎とは、なんらかの原因で膵臓に炎症が起き、嘔吐や食欲不振、ひどい腹痛などがみられる病気です。
重篤な場合は命にかかわる病なので、アボカドのように高脂質な食べ物は日頃から与えないよう心がけましょう。
種の誤飲は窒息や腸閉塞につながる
アボカドを丸ごと飲み込んでしまったり、種で遊んでいるうちに飲み込んでしまったりすると、窒息や腸閉塞の危険性があります。
品種によっても異なりますが、アボカドの種の大きさはおよそピンポン玉と同じくらいのサイズです。
これは中型犬・大型犬であれば難なく飲み込めてしまう大きさなので、犬が口にしないようくれぐれも注意しましょう。
なお、種がのどや胃を通過できたとしても、腸のどこかで詰まってしまい腸閉塞を起こす可能性は十分考えられます。
腸閉塞を放っておくと腸の壊死や腹膜炎などを起こし命にかかわるため、万が一犬がアボカドの種を飲み込んでしまったときは、すぐに動物病院を受診しましょう。
食物アレルギーにも注意が必要
アボカドに食物アレルギーがある犬では、皮膚のかゆみや下痢、嘔吐などの症状がみられます。
食物アレルギーは食べ物のタンパク質に対する過剰な免疫反応によって起こり、アボカドのほかにも、肉や魚、穀物などさまざまな食べ物が原因になります。
ちなみに、アボカドのタンパク質はラテックス(天然ゴム)のタンパク質と分子構造が似ているため、ラテックスアレルギーの犬ではアボカドのアレルギーも起こしやすいといわれています。
ラテックス製のおもちゃに触れると皮膚が赤くなったり、痒がったりするなどの様子がみられる場合は、アボカドにも接触させないよう注意してください。
犬はアボカドをどのくらい食べたら危険?
犬にとって危険なアボカドの量はまだ分かっていませんが、可食部分である果肉はペルシンが少なく、少量食べた程度では問題ないといわれています。
皮をむいたアボカドを舐めたりひとかけら食べたりしても、命にかかわる重篤な状態に陥る可能性は低いといえるでしょう。
ただし、アボカドによって体調を崩すかどうかは、アボカドの品種や状態、体の大きさや健康状態によっても異なります。
というのも、アボカドには1000種類以上の品種があり、それぞれペルシンの含有量が異なります。
また、完熟のアボカドにくらべて、未熟な状態のアボカドはペルシンの量が多く、より危険性が高いといわれています。
熟したアボカドの果肉にはほとんどペルシンは含まれていませんが、大量に摂取すれば体調不良を引き起こす可能性もあるため、くれぐれも注意しましょう。
犬がアボカドを食べてしまったときの対処法
前述の通り、皮をむいたアボカドを少量食べたくらいであれば、大きな影響が出る可能性は少ないでしょう。
愛犬の様子に変わったところがなく普段通り生活している場合は、ひとまず自宅で様子をみてください。
異変があったときすぐに対応できるよう長時間の外出は避け、念のため夜間救急の連絡先や場所なども調べておくと安心です。
一方、果肉を大量に食べてしまったり、皮や種を誤飲したりした場合は、なるべく早くかかりつけの動物病院を受診しましょう。
膵炎や腸閉塞の場合、食べてすぐは特に症状がなくても、時間が経つにつれ命にかかわる重篤な状態に進行する可能性も考えられます。
食べてから2~3時間以内であれば催吐処置や投薬、点滴などで対処できるケースも少なくないため、急いで動物病院に連絡してください。
動物病院に連絡するときは「どの部分を、いつ、どのくらい食べたのか」伝えると、治療の役に立ちます
自己判断で吐かせるのはNG
良くないものを飲み込んだ犬に対し、家でできる応急処置として「塩水やオキシドールを飲ませる」という方法がありますが、これは絶対にやってはいけません。
というのも犬に塩水を飲ませた場合、過剰な塩分摂取によって食塩中毒を起こし、命を落としてしまう可能性があるからです。
また、オキシドールを飲ませたことで胃や食道粘膜が傷ついてしまったり、胃内で発生した泡をうまく吐き出せず、誤嚥したりする可能性もあるでしょう。
もし愛犬がアボカドを食べてしまった場合は自己判断で吐かせようとせず、必ず動物病院に連絡のうえ獣医師の指示を仰ぐことが大切です。
犬のアボカド誤食を防ぐ方法
犬に対するアボカドの有害性はまだ明確になっていませんが、牛や馬、鳥などさまざまな動物が中毒を起こす可能性を考えると、与えないに越したことはありません。
愛犬の命と健康を守るためにも、アボカドの誤食には十分注意しましょう。
ここでは、犬の誤食を防ぐ主な方法を3つ紹介します。
アボカドは犬が届かない場所に置く
盗み食いを防ぐため、アボカドは犬が絶対に届かない場所に置きましょう。
犬の嗅覚はとても優れており、箱や布などで隠しても敏感に食べ物の匂いを察知します。
「これはなんだろう?」とアボカドをかじってしまったり、遊んでいるうちに丸飲みしてしまったりすることも考えられるため、アボカドは犬が開けられない棚の中や高い場所、冷蔵庫の中に保管することをおすすめします。
人間の食事をおすそ分けしない
好奇心旺盛な犬や食いしん坊の犬では、人の食事を食べたがることもあるでしょう。
少しならいいかとおすそ分けするクセがついていると、ついうっかりアボカドを与えてしまうことがあるかもしれません。
そもそも人間用に味付けした料理は犬にとって塩分が多すぎたり、偏食の原因になったりする可能性があるため、安易に与えるのはNG。
うっかりミスを防ぐためには、普段から人間の食事を与えないよう心がけておくことが大切です。
ゴミ箱はフタ付きのものを使用する
ゴミ漁りによるアボカドの誤食を防ぐには、フタ付きのゴミ箱を使うのがおすすめです。
犬がゴミ箱を倒しても中身がこぼれないよう、なるべく頑丈なものを選びましょう。
今までゴミ箱を漁ったことがない犬でも、なにかのきっかけでゴミ箱に興味を示してしまうことは珍しくありません。
飼い主さんの姿が見えないときに限ってイタズラする犬も多いため、見ていられないときはサークルやクレートに入れておくのもひとつです。
犬とアボカドについてよくある質問
最後に、アボカドについてよくある質問に犬の管理栄養士の私が回答します。
- 加熱したアボカドなら大丈夫?
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ペルシンの毒性は加熱しても残るという説と、加熱すれば無毒化できるという説があります。
正反対の情報ですが、どちらも明確なエビデンスがない以上、「加熱すれば大丈夫」と言い切ることはできません。
真偽のほどは不明ですが、アボカドを加熱した際に出たガスで鳥が命を落としたという情報もあります。
- 観葉植物用のアボカドも危ない?
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ペルシンはアボカドの葉にも含まれているため、観葉植物としてアボカドを飾っている場合は注意が必要です。
葉っぱをちじって飲んでしまった場合はペルシン中毒を起こす可能性があるため、発覚した段階ですぐに動物病院を受診しましょう。
万が一を防ぐため、アボカドは犬が届かない高い位置に設置するか、犬が絶対に入らない部屋に飾るようにしましょう。
- アボカド入りのドッグフードやオイルも危険?
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ドッグフードの中には、アボカドやアボカドから抽出したオイルを使った商品も存在します。
アボカドの豊富な栄養素は犬にも良い効果が期待でき、特に皮膚・被毛の健康維持をサポートしてくれるのだとか。
事実、アボカドを使った商品を犬に与えている人は珍しくなく、満足の声も上がっています。
また、アボカド製品を販売する各メーカーは「ペルシンは犬に影響しない」「ペルシンが少ない品種・部位を使用しているので安心」などと説明しており、これらを犬に与えたことで健康被害が出たという報告も現段階では上がっていません。
一方で、製品中のペルシン含有量や犬への影響がないとする医学的な根拠も明らかになっていないため、安全性について断言するのは難しいといえるでしょう。
まとめ
アボカドは栄養豊富で身近な食べ物ですが、犬が食べると体調を崩す可能性があるため注意が必要です。
与えるつもりがなくても、うっかり落としたアボカドを食べてしまったり、ゴミ箱を漁って口にしてしまったりする可能性もあります。
もし愛犬がアボカドを食べてしまった場合は異変がないか様子をよく観察し、違和感があればすぐに動物病院を受診しましょう。
種の誤飲は窒息や腸閉塞のリスクが高いため、変わった様子がなくても適切な処置を受けてくださいね。
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