「愛犬がくしゃみをしてて苦しそう!」「病院に連れて行った方が良い?」
愛犬のくしゃみが、なかなか止まらなかったり、いつもと違ったりすると飼い主さんは不安になりますよね。
この記事では、愛犬がくしゃみをする原因やくしゃみの対処法、考えられる病気について獣医師が解説しています。
飼い主さんは、この記事を読むと犬のくしゃみについて詳しく理解でき、愛犬のくしゃみは、動物病院に連れていくべきかどうか判断できるようになります。
犬と生活する上で、飼い主さんは必ず知っておくべき必須情報ですので、ぜひ読んで参考にしてみてください。
犬がくしゃみをする4つの原因
犬がくしゃみをする原因は主に以下の4つが考えられます。
- 生理現象
- 異物による刺激
- 花粉症などのアレルギー
- 病気
それぞれについて解説していきます。
①生理現象
犬も人と同じように生理現象によりくしゃみをします。
生理現象によるくしゃみは以下のような特徴がありますので、飼い主さんはチェックしてみてください。
- 元気、食欲はいつも通り
- 数回くしゃみしただけで、すぐに止まる
- 何か変な匂いを嗅いだ
- 寒暖差が激しい
- 日光などに急にあたる。眩しい環境にいる
- 興奮を落ち着けようとしている(カーミングシグナル)
生理現象によるくしゃみは、特に健康状態に異常はないことがほとんどです。
そのため、回数が増えたり、鼻水が出たり、元気・食欲が低下しない限り様子見してあげて良いでしょう。
②異物による刺激
犬は、鼻が異物により刺激された場合に、くしゃみをすることがあります。
異物の刺激によるくしゃみは、鼻の中、鼻腔内の異物を排出しようとする正常な反応です。
異物による刺激でくしゃみをしている場合には、以下のような特徴が認められますので注意深くチェックしてみてください。
- 鼻を気にするそぶり
- 鼻を地面に擦り付ける
- 何度もくしゃみをする
- くしゃみの頻度が増えた
- 鼻水・鼻血を出す
犬は、自分で鼻の中の異物を取り除くことができません。
飼い主さんは、しっかり鼻の穴や鼻腔周辺を観察し、異物がないかどうか見てあげるようにしましょう。
異物が確認できず、くしゃみが止まらない場合は、鼻腔内腫瘍や鼻の奥深くに草や葉、虫が入り込んでいる場合もあるので、一度動物病院でしっかりみてもらうことをおすすめします。
③花粉症などのアレルギー
犬は、花粉症などのアレルギーによりくしゃみをする場合があります。
犬にくしゃみを引き起こすアレルゲンとしては、以下のようなものが考えられます。
- 花粉
- ハウスダスト
- ダニ
- カビ
アレルギーによるくしゃみを特徴を以下にあげていますので、飼い主さんはぜひチェックしてみてください。
- 目の充血がある
- 顔まわりの赤みや痒みがある
- 目やにがある
- 季節性がある
- 元気や食欲は変わりない
- アレルギーの治療に反応する
愛犬がアレルギーによりくしゃみをしている場合には、くしゃみ以外にも症状があることが多いです。
アレルギーによるくしゃみの症状は、病院で内服薬や目薬などの薬を処方してもらうことにより改善していきます。
アレルギーの症状を放置していると、どんどん症状が悪化していくことがありますので早めに対処してあげるようにしましょう。
④病気
犬のくしゃみは、病気が原因であることも考えられます。
くしゃみの原因となる病気は以下の通りです。
- ケンネルコフ
- 歯周病
- 鼻炎
- 鼻腔内腫瘍
病気の可能性が考えられるくしゃみの特長は以下の通りですので、飼い主さんはチェックしてあげるようにしましょう。
- くしゃみが止まらない
- くしゃみの回数が増えた
- いつもと違うくしゃみをしている
- 咳が出る
- 白〜黄色の鼻水が出る
- 鼻血が出る
- 歯石がある、口臭がきつい
飼い主さんは、愛犬が病気が原因でくしゃみをしている場合、放置しないことが大切です。
くしゃみを引き起こす病気については、「犬のくしゃみから考えられる病気は?」の章で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
犬のくしゃみが止まらない時はどうすればいい?
愛犬のくしゃみが、なかなか止まらない時は、「動物病院に連れていくべきくしゃみ」か「様子を見ていいくしゃみ」かで対処法が異なります。
- 病院に連れていくべきくしゃみ・・動物病院で獣医師の診察を受ける
- 様子を見ていいくしゃみ・・自宅でできる対処法を行う
まずは、愛犬のくしゃみが「動物病院に連れていくべきくしゃみ」かどうかを判断してあげましょう。
この章では、「動物病院に連れていくべきかどうか」の判断ポイントを含め対処法を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【病院に連れていくべきくしゃみ】動物病院で獣医師の診察を受ける
犬のくしゃみは生理現象によるものの場合は、様子を見てあげても良いのですが、くしゃみの原因が異物やアレルギー、病気の場合は、動物病院を受診するようにしましょう。
動物病院に連れていくべきくしゃみの症状は、以下の通りです。
- くしゃみの頻度が多くなった
- 鼻を気にするそぶり
- 鼻を地面に擦り付ける
- 元気・食欲が低下している
- 白〜黄色の鼻水が出てる
- 目の充血、顔まわりや体の痒み、目やにがある
- 鼻血が出てる
- 咳がある
- 歯石がある、口臭がきつい
- 顔の形が変わってきた
犬のくしゃみを引き起こす原因の中には、鼻腔内腫瘍など命に関わる病気が隠れている場合があります。
上記のような症状に一つでも当てはまる場合には、獣医師さんの診察を受けるようにしてください。
【様子を見ていいくしゃみ】自宅でできる対処法を行う
上記の「動物病院に連れていくべきくしゃみ」の項目に当てはまらない場合は、生理的なくしゃみである可能性があります。
緊急性がある可能性は低いため、自宅でくしゃみに対する対処法をしてあげると良いでしょう。
自宅でできるくしゃみの対処法としては以下のようなものが考えられます。
- 部屋を換気したり、空気清浄機を用いる
- 鼻に何か異物がついている場合は取り除く
- 激しい寒暖差や急な刺激などストレスを与えないようにする
- 予防的に歯磨きを行う
飼い主さんは、なるべくこまめに部屋を換気したり、空気清浄機を用いて環境中のホコリやアレルゲン物質を部屋から取り除くようにしてあげましょう。
また、犬のくしゃみは、急な寒暖差、光、興奮状態などによっても起こるとも言われいるので、こうしたストレスを与えないような生活を心がけてあげましょう。
さらに、予防的に歯磨きを行うことも大切です。
歯磨きは、老犬のくしゃみの原因でよくある歯周病を予防することができます。
定期的な歯磨きを行い、歯周病を防止している子は、くしゃみが少ない傾向にありますので、飼い主さんは、ぜひ愛犬の歯磨きを生活に取り入れて行ってあげてください。
犬のくしゃみから考えられる病気は?
犬のくしゃみから考えられる病気としては、以下のようなものが考えられます。
- ケンネルコフ(犬伝染性気管支炎)
- 歯周病
- 鼻炎
- 鼻腔内腫瘍
それぞれについて詳しく解説していきます。
ケンネルコフ((犬伝染性気管支炎)
ケンネルコフは犬伝染性気管支炎とも呼ばれる犬の細菌性、ウイルス性の気管支炎です。
ケンネルコフには以下の特徴があります。
- 子犬(生後6週齢〜6ヶ月)やその同居犬で多く見られる
- 症状は、咳、くしゃみ、発熱、元気・食欲の低下などが認められる
- ペットショップやブリーダーで感染することが多い
- 軽度であれば、無治療でも1週間ほどすれば治る
- 重症の場合、肺炎などを引き起こし命を落とすこともある
ケンネルコフは、ペットショップやブリーダーなど多頭飼育されている環境で蔓延していることが多いです。
軽症の場合は無治療でも治りますが、まれに肺炎や慢性気管支炎を引き起こし、重症化することもあります。
飼い主さんは、迎え入れたばかりの子犬がくしゃみに加え、咳もしている場合には、ケンネルコフに注意して早めに動物病院を受診するようにしましょう。
歯周病
歯周病がくしゃみの原因となっていることは、意外にも多いです。
歯周病は、犬がシニア期(7歳以降)になってくると、よく見られる病気です。
また歯周病は、進行すると、歯の根本を溶かしていき、最後には上顎の骨も溶かしていきます。その結果、鼻腔へ細菌が感染し、鼻炎を起こすことでくしゃみの原因となります。
歯周病の特徴は以下の通りです。
- シニア期〜老犬の犬に多い
- 口臭の悪化の原因になる
- トイプードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンドなど口が小さな小型犬に多い
- 進行すると顎の骨を溶かし、くしゃみを引き起こす
- 頬の骨を溶かして目の下に穴が開いたり、膿が排泄されたりすることもある
犬の歯周病は、シニア期〜老犬に多いです。
治療としては、歯を抜いてあげる抜歯や、歯石をとってあげることなどが治療方法として考えられます。
しかし、シニア期以降の犬は何かと病気も多く、麻酔リスクも高いです。
そのため、飼い主さんは、小さな頃からデンタルケアを行い、歯周病を予防していくように心がけましょう。
関連記事:トリマーが選ぶ犬の口臭ケアグッズおすすめ9選!実際に使っている口臭対策グッズをご紹介!
鼻炎
鼻炎はくしゃみの原因となります。
鼻炎の特徴は以下の通りです。
- くしゃみの他にも鼻水や目やにといった症状がある
- 細菌・ウイルスの感染、アレルギーによっても引き起こされる
- 腫瘍が原因のこともあるので、注意が必要
- コリーやダックスフンドなど鼻腔が長い子で多い
鼻炎の症状は、くしゃみの他に鼻水や目やにといった症状があることが多いです。
細菌・ウイルス感染による鼻炎の場合は、適切な薬の投与によって改善されていきます。
ただし、鼻炎の原因として腫瘍であったり、難治性の鼻炎があったりすることも多いので、愛犬に鼻炎の症状が認められた場合には、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
鼻腔内腫瘍
くしゃみの原因が鼻腔内の腫瘍による場合もあります。
鼻腔内腫瘍の特徴は以下の通りです。
- くしゃみや鼻血、いびき、鼻水が症状として出てくる
- ほとんどが悪性腫瘍
- 顔面が変形することもある
- 腫瘍が大きくなると食欲不振、神経症状
犬の鼻腔内腫瘍では、くしゃみの他にいびき、鼻水、鼻血が症状としてあらわれてきます。
特に鼻血は、鼻腔内腫瘍を疑う症状です。
愛犬に鼻血が見られた場合には、動物病院で精査してもらうようにしましょう。
鼻腔内腫瘍には、さまざまな種類がありますが基本的に悪性腫瘍のことが多いです。
最終的には、大きくなった腫瘍により顔面が変形したり、痛みから食欲不振になったり、発作や沈鬱などの神経症状を起こしたりする場合があります(*1)。
放射線治療によりある程度、進行を遅らせることもできますので、飼い主さんは鼻腔内腫瘍を疑うようなくしゃみ、鼻血が認められた場合には、すぐに動物病院に連れていくようにしてください。
逆くしゃみとは?
鼻腔に刺激があった場合に空気を吐き出すのが「くしゃみ」ですが、逆に空気を吸い込む症状のことを「逆くしゃみ」と言います。
この逆くしゃみは、健康な子でも認められる症状であり、生理的な現象です。
逆くしゃみは、息を吸い込みながら、鼻をズーズー鳴らすというような症状が見られます。
飼い主さんは、
- 過呼吸
- えづき
- 吐き気
といった症状と間違えて、来院されることが多いです。
一度、愛犬の逆くしゃみの症状を動画に撮って病気でないかどうか獣医師に確認してみてください。
逆くしゃみは、1~2分もすれば止まりますので、飼い主さんは、しっかり様子を見守ってあげましょう。
もし、長引くようならば、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
犬のくしゃみのよくある質問
- くしゃみをするときすごい頭を振ってるけど大丈夫?
-
一度、動物病院で獣医師に診てもらいましょう。
鼻腔内に違和感があり、頭を振っている可能性もあります。もしかしたら、鼻腔内腫瘍や異物などがあるかもしれません。
異常がなければ、安心ですが、鼻腔内腫瘍は早期発見が大切なので、念の為の検査をおすすめします。
- 人間みたいにさむいとくしゃみをする?
-
犬も寒さにより、くしゃみをすることがあります。
これは、冷気を吸い込むことにより、鼻腔が刺激され、くしゃみを引き起こすためです。
他にも、くしゃみには、呼吸筋や上半身の筋肉を収縮させ体温を上昇させる効果があります。
生理現象ですので、飼い主さんは様子を見てあげて良いでしょう。
- ストレスでくしゃみをすることはある?
-
ストレスでくしゃみをすることもあります。
犬には、カーミングシグナルといった自分自身を落ち着かせるために行う行動があり、くしゃみもその1種であると言われています。
極度の緊張や興奮などのストレスを受けた場合、自分自身を落ち着かせるためにくしゃみをすることがあります。
犬にとっては、正常な反応ですが、あまりにくしゃみが多い場合には、ストレスを与えない生活を心がけましょう。
まとめ
本記事では、犬のくしゃみについて原因や対処法などを解説してきました。
飼い主さんは、犬のくしゃみに異変を感じると、動物病院に連れていくべきかどうか迷うことも多いです。
動物病院に連れていくべきくしゃみの症状をおさらいしておきましょう。
- くしゃみの頻度が多くなった
- 鼻を気にするそぶり
- 鼻を地面に擦り付ける
- 元気・食欲が低下している
- 白〜黄色の鼻水が出てる
- 目の充血、顔まわりや体の痒み、目やにがある
- 鼻血が出てる
- 咳がある
- 歯石がある、口臭がきつい
- 顔の形が変わってきた
飼い主さんは、愛犬が上記のリストに当てはまるようなくしゃみをしている場合には、動画を撮って動物病院に連れていくようにしましょう。
犬のくしゃみは、病気のサインであることもあります。
「くしゃみは生理的なものだから、問題ないだろう」と思わず、日頃から愛犬のくしゃみを観察して、少しでも気になることがあれば動物病院を受診することをおすすめします。
参考文献
*1 動物の腫瘍 インフォメーションシート⑥ 北海道大学動物医療センター外科/腫瘍診療科
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