【獣医師執筆】ドッグフードに入ってる穀物は犬の体に悪い?穀物についての正しい知識を紹介!

穀物とは、イネ科植物に属する米、麦類、とうもろこしや、雑穀と呼ばれるキビ・ヒエ・アワのことです。

最近、インターネット上で「犬に穀物はよくない」、「穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードの方が良い」という声を耳にしたことがあるかと思います。
この記事では、犬に穀物を与えるのは悪いことなのか?そのメリットやデメリットについて解説します。

犬にとって穀物を与えることはデメリットなの?穀物が悪いとされる理由とは

ここでは、「犬に穀物を与えることが悪い」「穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリードッグフードを与えた方が良い」と言われている理由について解説していきます。

消化器に負担がかかりやすい

犬は人と違って、穀類を消化するためのアミラーゼというが消化酵素唾液内に含まれていないために、穀類を消化することができません。
そのため穀類を大量に摂取すると、消化器官など負担をかけてしまう可能性があると言われています。

一方、アミラーゼは唾液中だけでなく膵臓でも分泌され、腸で消化が行われています。人に比べれば犬は穀物を消化することは得意ではありません。しかし、犬が穀類を消化できないというのは間違いという意見もあります。

どちらにせよ、ドッグフードに使用されている穀物については炭水化物の消化性を考慮して、きちんと加熱調理されたり、アルファ化されていたりと、調理や加工で消化性が高められているため犬に与えても問題はありません

肥満になる可能性がある

穀物はタンパク質の分量が少なく、炭水化物の分量が多い食材です。
そのため犬にとっても、炭水化物は血液中で糖分として吸収されるため、太りやすくなってしまいます

犬が肥満になると、さまざまな病気のリスクが高くなってしまいます。

アレルギーの原因となる可能性も

穀物はアレルギーの原因になると言われていますが、穀物の種類によります。
ドイツ・ミュンヘン大学の研究チームによると、犬のアレルギーの原因となる食材として報告が一番多いのが牛肉で、乳製品、鶏肉と続き、鶏肉に次いで4番目に小麦が報告されています。

また、7番目にトウモロコシ、11番目に米が報告されていますが、穀類全てが特別アレルギーの原因になりやすい食材とは言えず、米にいたってはアレルギーが出にくい食材としてアレルギー食にも使用されています

犬が穀物を摂取することのメリットは?

ここでは、犬が穀物を摂取するメリットについて解説します。

便通を改善する

穀物には食物繊維や難消化性デンプンが含まれており、摂取することで犬の腸に適度な刺激を与えてくれます。
それにより、胃腸の運動性が高まるに加え、消化吸収も促され、整腸作用が期待されます

腸内の善玉菌が増える

穀物に含まれている難消化性デンプンや食物繊維は、犬の腸内の善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌などのエサとなります。
そのため、穀物を食べることにより犬の腸内善玉菌が増え、腸内環境が整うことが期待できます。

栄養バランスの調整ができる

犬は、犬種やライフステージ、持病などによって必要な栄養素が違います。
穀物は、栄養バランスの調整をするうえで、欠かすことのできないものなのです。

穀類は種類や使用する部位によって含まれる栄養素が異なるため、それぞれの目的に合わせて適度に穀物を与えることにより、不足している栄養素を補うことができます。

犬にグレインフリーやグルテンフリーフードを選んで与えた方が良い?

愛犬のドッグフードを穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーに変更した方が良いのか悩んでいる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは、グレインフリー・グルテンフリーのドッグフードが流行した理由と、愛犬への適切なドッグフードの見分け方について解説します。

グレインフリーやグルテンフリーフードとは?

穀物は英語でグレイン(grain)と呼び、穀物が含まれないドッグフードをグレインフリードッグフードと呼びます

また、グルテンフリーのグルテンとは、小麦に含まれるタンパク質のことです。
「グルテニン」と「グリアジン」という2つのタンパク質に水が加わって、絡み合うことによって形成されます。

小麦以外の大麦やライ麦などの麦類には、グルテニンではなく、グリアジンに似た「セカリン」が含まれているため、グルテンは形成できません。
しかし、グルテンフリーとはグルテンを含まないという意味であると同時に、広く麦類を避けるという意味でも使われることがあるため、他の麦類が含まれている場合は厳密に言えばグルテンフリーとは呼べないのです。

穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードが流行した理由

穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードが流行したのは、2007年に中国産のウェットフードに有機化合物であるメラミンが添加された小麦グルテンが含まれており、そのフードを食べた犬が続々と腎不全に罹患したという事故が発生したことが理由と考えらています。

その事故による「中国産の穀物を使ったペットフードへの不安感」という飼い主さんたち心情をペットフードメーカーがうまく捉え、穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードという新たな市場を創り出し、流行につながったのです。

うちの子は穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードのドッグフードにした方が良いの?適切なドッグフードの見分け方

小麦には前述したようにグルテンというタンパク質が含まれており、犬も人同様このグルテンにアレルギー反応を起こす場合があります。

そもそも人においてグルテンフリーは、グルテンを摂取することで腹痛や倦怠感などさまざまなな症状が現れるセリアック病小麦アレルギーの患者さんにとっての食事療法でした。
しかし、近年ではセリアック病や小麦アレルギー患者さんほどではなくても、グルテンを摂取することで少し倦怠感や頭痛を引き起こしてしまう「グルテン不耐性」の人が多くいることがわかってきました。

そこで、食や健康意識の高い人達やスポーツ選手の間で、グルテンフリーを実践することにより慢性的な不調が改善されたり、肌が綺麗になったり、パフォーマンスが劇的に改善したなどの効果がみられた人たちがたくさん出てきたのです。

犬においても、小麦アレルギーの場合はグルテンフリードッグフードを。穀物全般のアレルギーがある場合はグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードを与えるようにしましょう

また、グレインフリー・グルテンフリーのドッグフードを与えてみて体調が良さそうであれば変更してみるといった具合で選んでも良いかと思います

ドッグフードに含まれている代表的な穀類

穀物は炭水化物源になるだけでなく、タンパク質や脂質、ミネラル、ビタミンなどをバランス良く摂ることができます。
それぞれ特徴がありますので、ここではドッグフードに含まれている代表的な穀物について、ご紹介します。

とうもろこし

とうもろこしはドライフードの形を保つ目的や、安価なためかさ増し目的で使われることが多い穀物です。
アレルギーの原因になりやすいと言われていますが、前述した通り牛肉や鶏肉、小麦、大豆、に比べてアレルギーのリスクが低い食材で、炭水化物以外にビタミン類やミネラルが豊富に含まれています。

ただ、とうもろこしは血糖値を急激に上昇させやすい食材のため太りやすく、原材料の欄で肉類より先にとうもろこしが記載されているフードはおすすめしません

小麦粉

小麦粉はドッグフードでは小麦、小麦グルテン、小麦ミール、小麦胚芽と表記されています。

小麦には前述したようにグルテンというタンパク質が含まれており、そのため犬では牛肉、乳製品、鶏肉と続き4番目にアレルギー報告が多い食材です
そのため、小麦アレルギーの場合は、小麦のみを不使用にしたグルテンフリーのドッグフードを与えるようにしましょう。

特に、アイリッシュセッターという犬種は、前述した人のセリアック病と似たグルテン過敏症を稀に起こす場合があるため注意が必要です。

米は77%が糖質でできており、体や脳を動かすエネルギー源となります。

その他、タンパク質やカルシウム、マグネシウム、ビタミンなども含まれているバランスの良い穀物です。
さらに、神経機能や脳の働きを正常に保つビタミンB1も含まれています。

米は炊いた状態であれば犬も消化することができ、穀物の中でも小麦やとうもろこしに比べアレルギー性の低い食材です。そのため、アレルギー対策のドッグフードや療法食で使用されることがあります。

大麦

大麦は、麦茶やビール、ウイスキー、もち麦の原料となる穀物です。
ドッグフードでも大麦が使用される場合があり、小麦で懸念されるアレルギー原因物質のグルテンは含まれていません。

ただ、大麦に小麦が混ざりこんだり、小麦のグルテンにアレルギーがあると交差反応で大麦でもアレルギーが出る場合があるため、小麦アレルギーがある犬にはあまりおすすめしません

オート麦・ライ麦

オート麦とライ麦は、麦類の一種で大麦と一緒にドッグフードに配合されることが多い穀物です。
これらは、穀物のなかでもカルシウムを多く含んでおり、コレステロール値を正常に保つ働きをするβ-グルカンを含んでいます。

どちらにもグルテンは含まれていませんが、小麦と交差抗原性が確認させているため、小麦アレルギーがある犬は避けた方がいい食材です

ヒエ・アワ・キビ

ヒエ・アワ・キビは古くから栽培されている穀物で、雑穀と呼ばれることもあり、たんぱく質や疲労を回復させる効果のあるビタミンB1、強い骨をつくるケイ素が含まれています。

これらは、小麦にアレルギーがあっても安心して食べることができる穀物です

犬への穀物の適切な与え方について

最近では、ドッグフードでなく手作りのご飯をあげている飼い主さんも増えてきました。
ここでは、犬への穀物の適切な与え方のポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

アレルギー反応に注意する

穀物を初めて与える際には、小麦アレルギーを持っている可能性を考え、愛犬の様子を見ながら少量ずつ与えましょう。
もし、皮膚を痒がったり、嘔吐や下痢などの消化器症状が現れたら、アレルギー反応を起こしている可能性があるため、動物病院を受診し原因となった穀物は今後与えないようにしましょう。

しっかり加熱処理をする

人が米を炊いて食べるように、穀物は生のまま摂取すると、消化しづらいため加熱処理をしっかりするようにしましょう

消化しやすい大きさや形にする

穀物は出来るだけ消化しやすいように細かく砕いたり、すりつぶしたりなど工夫をして与えましょう
特に、とうもろこしの芯は小さく砕いても消化できないため実だけを与え、さらに実は加熱処理してからペースト状にするとより消化しやすくなります。

適切な量を与える

穀物だけでは1日に必要な栄養素を補えないため、主食として穀物を与えるのはおすすめしません。
犬の1日の穀物の適量は、1日の給餌カロリーの10%以内が目安です。ここで注意したいのが、ドッグフード以外におやつなど1日に与える食材をすべて合わせて10%以内にするようにしましょう。

まとめ

犬が歩く

「犬に穀物を与えるのは悪いこと」という主張を耳にしますが、これには科学的な根拠はありません
さらに、2019年にはアメリカの食品医薬品局(FDA)により、穀物を含まないグレインフリー・グルテンフリーのドッグフードを摂取している犬は心臓病のリスクが高いとも報告されています

愛犬により良いものを食べさせてあげたいと思う飼い主さんは多いと思います。
しかし、人と犬が必要とする栄養は異なりますので、飼い主さんが確かな情報をもとに判断するか、獣医師に相談するようにしましょう

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西岡 優子獣医師
獣医師 【経歴】 北里大学獣医学部獣医学会 卒 砂川犬と猫の病院 勤務医 都内の獣医師専門書籍・雑誌出版社 編集者 吉田動物病院 勤務医 獣医師として就労する傍ら、犬・猫・小動物系ライターや監修として活動中 【資格・所属】 一般社団法人 日本ペット技能検定協会認定 ドッグライフアドバイザー/西日本心臓病研修会 心エコー技術トレーニングコース 修了/獣医画像診断学会 所属/ペット栄養学会 所属