犬が震える原因は?予防法や動物病院に連れて行くか判断する基準を分かりやすく解説

愛犬と日常生活を送る中で、小刻みに震えたり時にはガクガクと大きく震えるといった光景を目にしたことはありませんか?

すぐに改善するのであれば良いですが、震える回数が多かったり治まるまでの時間が長かったりすると「愛犬の体に何か異常があるのではないか」と不安になってくる飼い主さんも多いことでしょう。

そこで、今回は犬が震える原因や予防法・動物病院に連れて行った方がいいのか判断する基準を徹底解説していきます。

監修者

獣医師  栗尾雄三
経歴:平成30年に「konomi動物病院」開院しました。 トリミングとペットホテルを併設し、送迎対応も行っております。 地域の中核となる病院を目指し、毎日の診療に全力を尽くしています。 自分の姿をみて「獣医師になりたい」と思ってくれるよう、心を込めて動物たちと向き合っています。

目次

犬の震えと痙攣にはどのような違いがあるの?

犬の震えが、痙攣を起こしている場合もあります。

ここでは、犬の震えと痙攣にどのような違いがあるのか解説していきましょう。

震えの特徴

震えは犬の一部の筋肉が収縮してブルブルと振動してしまう状態です。

小刻みで規則的な震え方は「振戦(しんせん)」とも呼ばれており、原因が改善・取り除かれると振動も自然と止まるため、長く続く時もあれば比較的短時間で治まることもあります。

体が震えている最中も犬の意識に異常はなく、呼びかけに反応したり自由に体を動かして歩いたり横になったりするといった動作も可能です。

震えの原因は生理的なものから病気まで様々です。犬の震えの原因やその対処法を下記で詳しく解説していきます。

痙攣の特徴

痙攣は一部、もしくは全身の筋肉が激しく収縮し、以下のような不規則な動きを見せる状態のことを指します。

感染症や中毒・内臓の機能障害・脳の異常といったものが原因として挙げられることが多いですが、中には眠りの浅いレム睡眠の時に脳が活発に動いているためピクピクと痙攣する場合もあるようです。

痙攣の時に見られる動きの一例
  • 顔や体の一部がピクピクと小さく動く
  • 足をばたつかせる
  • 全身をガクガクと大きく震わせる

以上のような症状は体の一部だけという場合もあれば全身に現れることもあり、時間は短くて1分前後、長くなると5分以上痙攣が続くこともあるようです。

回数は年に1~数回程度や数日に1度といった場合もありますし、症状が深刻になると1日に何度も発生したり痙攣している最中に別の痙攣が新たに起きることもあるため、発生頻度には大きな差があります。

症状が軽ければ意識に異常はないですが、重くなってくると意識がもうろうとして呼びかけにも反応せず、犬自身の意思で体を動かすこともできません。

また、痙攣が起きると体の動きや意識の有無以外にも様々な症状が現れることがあるので、見逃さないように注意してください。

痙攣の時に見られるその他の症状
  • 息が荒い
  • 口や目を大きく挙げる
  • 大量によだれが出る
  • 口から泡を吹く
  • 嘔吐
  • 失禁
  • 数秒間呼吸が止まる

震えとは明らかに違う動きをしていたり、上記のような症状が見られる場合は痙攣を疑ってできるだけ早く動物病院に連れて行くようにしましょう。

犬が震える主な原因は?

犬の震えの原因として考えられるものは、病気ではない生理的なことや病気が関係しているものがあります。

それぞれさらに細かい原因があるので、ここからは生理的なものと病気が関係しているものに分けて詳しく見ていきましょう。

病気ではない生理的な震え

病気ではない生理的な震え一覧

筋力の衰え

加齢により少しずつ筋肉量が減ってしまうと、歩いたり立ち上がったりするだけでも踏ん張ることが難しくなり、足の震えやよろめきが見られるようになります。

また、若い犬だとしても運動不足の状態が長く続くと筋力が低下してしまうため、高齢犬と同じように歩いた時に震えてしまう場合があるようです。

寒さ

犬も寒さを感じると、体を温めようとしてブルブルと体を震わせるようになります。

仕組みは人間と同じで、全身の筋肉を小刻みに振動させることにより熱を発生させ、体温を維持しようとしているだけなので、寒さを改善できれば自然と震えも止まるでしょう。

寒さに弱い犬の特徴
  • トイプードルやチワワといった小型犬
  • 短毛種
  • 短頭種
  • 高齢犬
  • シングルコートの犬
  • 暖かい国が原産の犬
  • 脂肪が少ない犬
  • 体温調節がまだしっかりできない子犬

以上のどれかに当てはまる犬は寒さを感じやすいと言われているため、気温の低い日や冬の間は寒くならないように十分注意してあげてください。

恐怖・不安・ストレス

雷や花火・工事といった「大きな音」や動物病院に行く、知らない場所や人・犬と会った、怖い思いをした時の「不安」「恐怖」「警戒」といったものが原因でストレスを感じ、体が震えてしまうことがあります。

病気が原因ではないものの、放置して大きなストレスを抱えたままにしていると体調を崩したり威嚇や噛みつくといった問題行動を取るようになる可能性もあるので、できるだけ早く対処していくようにしましょう。

過去の経験

震えることで飼い主さんが構ってくれることを覚えていると、気を惹くためにわざと震えることがあるようです。

他にも、上でも書いたように怖い思いをした経験があったり、嬉しくて興奮していたりする時にも全身を震わせることがあります。

嬉しさや気を惹くために震えているなら問題なさそうに感じますが、興奮し過ぎると噛みついたり吠えたりすることもありますし、病気が原因の震えに気が付けなくなる恐れもあるので、わざと震えないようにしつけをするといいかもしれません。

病気からくる震え

病気からくる震え一覧

痛み

関節痛・椎間板ヘルニア・胃腸炎・膵炎といった痛みが発生する病気にかかると、ふらつきや震えといった症状が見られる場合があります。

他にも、痛みを感じる部分に触ろうとすると嫌がったり鳴き声をあげたり、歩くのを嫌がるといった素振りを見せることもあるため、震え以外に普段とは違う所がないか注意深く観察するようにしましょう。

発熱

発熱の原因が細菌やウイルスである場合、熱が高くなるのは体内に存在するウイルスや細菌が増えるのを防ぐためで、寒さを感じている時と同じように筋肉を震わせて熱を発生させ、体温を上げています。

膵炎や腸炎といった病気の場合は、特定の臓器に炎症が起こることで熱が高くなり、悪性腫瘍の場合は周辺組織を圧迫したり大きくなった悪性腫瘍が破裂することで炎症が起こり、結果として発熱という症状が現れるようです。

一般的に犬の体温は38.0~39.0℃が平熱とされていて、39.5℃以上は微熱、40.0℃を超えると発熱と判断されます。

体や足先がいつもより熱い・ぐったりしている・息が荒いといった症状が見られる時は、発熱を疑ってすぐに動物病院に連れて行くようにしましょう。

低血糖

血糖値が低くなり過ぎるとぐったりしたり元気がなくなることがあり、重症化すると痙攣や震え・意識障害を起こし、最悪の場合は命を落とす恐れもある危険な病気です。

低血糖の原因はキシリトールの摂取の他にも、糖尿病の治療のためにインスリンを投与していたり膵臓に腫瘍がある場合にも低血糖状態に陥ることがあるため、病気の治療中も十分注意するようにしてください。

また、ドッグフードをあまり食べておらず、長時間空腹状態が続いてしまうことでも低血糖を起こしますし、子犬は感染症や寄生虫が原因で体力を消耗したり血糖値の維持がまだ難しいので、嘔吐や下痢・食欲不振が続くと血糖値が下がってしまうことがあります。

中毒

犬にとって有害なものを口にすると引き起こされるのが「中毒」と言われるもので、数ある有害な食べ物や物質の中でも震えの症状が引き起こされるのは以下のようなものです。

犬が食べてはいけない食べ物の一例
  • ネギ類
  • ぶどう・レーズン
  • キシリトール
  • チョコレート
  • マカダミアナッツ
  • カフェイン
  • ニコチン
  • 殺虫剤
  • 除草剤
  • 人間用の解熱剤・鎮痛剤などの薬

以上のようなものを口にすることで低血糖や尿毒症、貧血や胃腸炎・膵炎などを引き起こし、震えが症状として現れることがあります。

内臓の機能障害

腎臓や肝臓に障害が発生すると、体内にある毒素の分解や排出がうまくできず、体内に溜まり続けてしまうようになり、結果として震えやよだれ・元気や食欲がないといった症状が現れます。

腎臓に問題がある場合は色の薄いおしっこがたくさん出るか、あるいは全く出なくなることがあり、肝臓が原因の場合はてんかん発作が現れることもあるようです。

犬が震えている場合に動物病院へ受診する判断基準は?

犬が震えていても問題のない場合もありますが、中には緊急を要することもあるため、ここでは、犬が震えている場合に動物病院へ受診したほうがいいケースを解説します。

震え以外の症状がある

震え以外の症状が確認される場合はもちろん「元気がない」「呼吸がいつもより荒い」といった普段とは明らかに様子が違う状態である場合は、なるべく早く動物病院に連れて行くようにしてください。

症状や状態の説明が上手くできそうにない時は、犬の様子を動画撮影したりおしっこや嘔吐物などを写真に撮って獣医師に見せると伝えやすくなるだけでなく、スムーズな診断ができるようになります。

また、犬が痙攣している時は下記のような対応をとりましょう。

犬が痙攣を起こしたときの対応
  • 嘔吐があるかもしれないので、のどに食べ物などがつまらないようにみてあげる
  • 20分以上痙攣が続くと体温が高くなってくるので、室温を下げたり、体を冷やしてあげる

特に体温が41℃以上になると命の危険も伴うため、体が熱いときは冷やしてあげることが大切です。

愛犬の様子を動画撮影したりどのくらいの頻度で発生し、症状が治まるまでにどれくらい時間がかかるのか、症状が現れる前後の状況といったことをメモに書いておくと獣医師に説明しやすくなります。

高齢犬である

犬も人間と同じく年齢を重ねると若い頃より免疫力が低下するため体調を崩しやすくなったり、関節のすり減りや太りすぎなどが原因で起こる関節症といった病気が隠されているかもしれません。

すぐに原因を見つけることができればそれだけ早く治療や対処・対策を取ることができるようになるので、念のために動物病院に連れて行って異常があるかを調べてもらうことをおすすめします。

山本星海

震えること以外は普段と変わらない、原因となっているものが取り除かれれば震えなくなるのでしたら一旦様子見しても問題ないでしょう。
対処法を続けてみても改善しない、もしくは原因を排除しても震えてしまう時は一度獣医師に相談することをおすすめします。

犬の震えを対処・予防する方法はある?

犬の震えは飼い主さんの工夫によって対処や予防が可能です。

ここで紹介する対処法は、犬の震えだけではなく、健やかな毎日を送るために大切なことなので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

筋力の低下が原因の対処法

加齢が原因の筋力低下の場合は、念のため異常がないか動物病院で診てもらい、それから無理のない範囲で運動を続けていくように心がけましょう。

例えば、いつもの散歩コースが辛そうだと感じる場合は、歩く距離や時間を変えてみたりできるだけ平坦な道に変更するのもおすすめです。

また、家の中はなるべく足が滑らずしっかり踏ん張れるように滑り止めを床に敷いてあげると、歩きやすく移動も楽になります。

年齢が若い犬で運動不足が原因の場合は、犬の大きさや犬種に適した散歩の時間を設けて、必要であればドッグランに連れて行って思いっきり遊ばせるようにしましょう。

ただし、小型犬や大型犬は激しい運動をすると関節に負担をかけてしまうことがあるため、散歩コースや遊び方には気を付けるようにしてください。

肥満が原因になっている場合は、適正体重に近づけるようにドッグフードの見直しや散歩や遊びの時間を増やすようにすると良いでしょう。

小型犬は心臓の状態が良くないケースも多いので、運動のし過ぎは注意が必要です!

寒さが原因の対処法

家の中にいる時に愛犬が寒がっているのであれば、暖房を入れてあげたりペット用のホットカーペットを置いてあげるのもおすすめです。

ただし、ホットカーペットは火傷の恐れがあるため、使用する際は取り扱いに十分気を付けるようにしましょう。

外に行く時は洋服を着せてあげると、散歩やお出かけの際も寒さをあまり感じずに行動できるようになるので、愛犬が洋服を嫌がらないようなら試してみてください。

恐怖・不安・ストレスが原因の対処法

恐怖や不安・緊張・警戒の原因になっているものを取り除く、または克服できれば自然と震えは治まります。

例えば病院に行くと震えてしまう場合は、病院から帰る時におやつを与えて思いっきり褒めてあげたり、散歩やお出かけの際に動物病院の前に行っておやつをあげて良い印象を与えるような訓練をするのもいいでしょう。

散歩コースに苦手な人や動物がいる場合は、散歩コースを変えてみるのも良いですし、苦手な音がある場合は似たような音を動画サイトで探し、小さく調整した音を普段から流して慣れさせるという方法もあります。

原因に合わせて様々な対策の仕方がありますが「何をやっても改善しない」「体調に悪い影響が出ている」といった時は、一度獣医師に相談することも検討してみてください。

痛みが原因の対処法

どの場所に痛みがあるのかを特定するためにしつこく触ると噛みついてくる可能性があるので、犬が嫌がるようであれば無理せず速やかに動物病院に連れて行って詳しく診てもらうようにしてください。

痛みの原因としてよく挙げられる椎間板ヘルニアは、高い場所から飛び降りたりツルツルした床で滑ったり肥満で足腰に負担がかかった結果、発症することがあると言われています。

そのため、床にカーペットを敷いたり高い場所から飛び降りないように階段を設置したり、体重管理をきちんとしていくといった対策をしていくようにしましょう。

山本星海

また、定期的に犬の爪や足の裏に伸びている毛をカットすることも滑り防止に有効なので、伸びてきたと感じたらお手入れしてあげてください。

低血糖が原因の対処法

子犬の場合は空腹状態が長く続かないように1回の食事量を少し減らし、その代わりに食事の回数を増やしてあげることをおすすめします。

また、感染症や寄生虫が原因の低血糖を防ぐために、ワクチン接種や駆虫といったものを必要なタイミングできちんと受けるようにすることも大切です。

成犬の場合は腫瘍や感染症にかからないように免疫力を高める、もしくは早期発見ができるように定期健診を受けると良いでしょう。

インスリン投与が原因になっているのであれば、過剰投与していないか今一度愛犬の体重や食事量、そしてインスリンの投与量を確認したり、判断が難しい時は動物病院に相談するようにしてみてください。

もし低血糖状態になってしまった時は、応急処置として砂糖水やガムシロップといったものを歯茎に塗ったり少しずつ舐めさせるようにし、すぐに動物病院で適切な治療を受けるようにしましょう。

中毒が原因の対処法

中毒を防ぐには、犬の移動範囲や犬が入ることのある部屋に中毒を起こすようなものを置かないようにしたり棚や引き出しの中にきちんと収納することが大切です。

料理中や食事の際は犬がキッチン、またはテーブルに近付かないようにするかケージに入れ、中毒を引き起こす可能性のある食材を使用したものは与えないように徹底しましょう。

万が一食べてしまった場合は、症状の有無に関わらずすぐに獣医師に診てもらい、必要に応じて適切な処置を受けるようにしてください。

内臓の機能障害が原因の対処法

内臓に関係する中毒症状を引き起こす有害な食べ物や物質を口にしないように気を付けることも大切ですし、普段から体調や食欲・おしっこの回数と色・量の確認をすることも重要なポイントです。

また、定期的に健康診断を受け、血液検査の結果を見比べてみたり獣医師からのアドバイスを参考にして今後の生活の仕方を決めていくのも良いでしょう。

継続的な健康診断のおかげで体の変化や病気の存在にいち早く気が付ける場合もありますし、早い段階で治療を受けられれば病気の進行を遅らせることができる可能性もあります。

まとめ

犬の震え、と一口に言ってもその原因は様々でとても複雑です。

生理的なものが原因になっていることもあれば、病気の症状のひとつとして目に見える形で現れることもあるため、どんな状況で起こるのか、その他に気になる症状はないかを冷静に落ち着きながら判断していけるようにしましょう。

震えの種類によっては予防をしたり改善することもできるので、日常生活でできる予防法は無理のない範囲で実践してみてください。

この記事を書いた人

山本 星海のアバター 山本 星海 Dog salon Star sea オーナー

この記事を書いた人

保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/動物取扱責任者/犬の管理栄養士/ペットフードアドバイザー1級/少額短期保険募集人
第一種動物取扱業:第225818003号 保管 動物取扱責任者:山本星海

JKC公認トリマー養成機関卒業。Dog salon Star seaを2018年に開業、犬のトリミングやドッグフードの販売を行う。トリマー歴10年目。愛犬:トイプードル2匹

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