愛犬家であれば「犬にとってフローリングが危険」という話しを耳にしたことはありませんか。
フローリングは犬にとって滑りやすく、ときには大きなケガを引き起こしてしまう可能性もあります。
日本では約7割近くがフローリングのお家となっているため、犬の足腰に負担をかけないような対策をしなければなりません。
この記事では「犬がフローリングで滑ることにより引き起こされるケガ」や「犬がフローリングで滑らないための対策」などを紹介していきたいと思います。
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/動物取扱責任者/犬の管理栄養士/ペットフードアドバイザー1級/少額短期保険募集人
第一種動物取扱業:第225818003号 保管 動物取扱責任者:山本星海
JKC公認トリマー養成機関卒業。Dog salon Star seaを2018年に開業、犬のトリミングやドッグフードの販売を行う。トリマー歴10年目。愛犬:トイプードル2匹
なぜ危険なの?犬にフローリングが危ない理由
フローリングは水に強く掃除がしやすいという利点があり、床暖房などもとり入れやすいことなどから、多くの家庭の床材として使用されています。
しかし、犬にとってフローリングは硬くつるつると滑りやすいため、ケガや病気のリスクが高まるのです。
フローリングの上を私たちが裸足で歩いても、滑りやすく困ることはあまりません。しかし犬の足裏は土や草など自然の上を歩くことに適した構造になっており、フローリングなど硬く滑りやすい地面を歩くことが苦手です。
犬の足の裏は肉球がありますが、多くを被毛に覆われていることがフローリングで滑りやすい原因となります。また、犬はブレーキを爪を立てることで行っていますが、フローリングは硬くつるつるしているため、爪が食い込みにくく踏ん張りがきかないといった理由も挙げられます。
そのためフローリングは犬にとって滑りやすく危ないと言われています。
犬がフローリングで滑ることで起こりやすい病気やケガ
犬にとってフローリングは硬く滑りやすいため、足腰に負担がかかり病気やケガの原因に繋がることもあります。フローリングが原因で起こりやすい病気やケガは、主に以下の通りです。
- 骨折・脱臼
- 股関節形成不全
- 膝蓋骨脱臼
- 椎間板ヘルニア
これらの病気やケガの中には、一度なってしまうと癖になり再発しやすくなるものや、症状が進行すると手術が必要になるものがあります。
ここでは、上記の病気やケガを詳しく紹介していきましょう。
脱臼・骨折
滑りやすいフローリング上で生活していると、ソファなど高い場所から飛び降りた際、踏ん張りがきかずに捻挫や脱臼、骨折などのトラブルを起こしがちです。
特に骨が細く関節の弱い犬種は注意が必要です。
該当する犬種は、主に以下が挙げられます。
- トイプードル
- チワワ
- ポメラニアン
- ヨークシャーテリア
- ミニチュアダックスフンド
- ミニチュアピンシャー
- パピヨン
該当する犬種以外にも、体の小さな小型犬や、体型がスリムな犬種は特に注意しましょう。
股関節形成不全
犬の股関節形成不全とは、太ももと大腿骨(だいたいこつ)を繋ぐ関節である股関節が、十分に成長しない病気です。
後肢と腰に衝撃や負担がかかり、股関節が緩むことで炎症が生じます。フローリングは滑りやすく足腰に負担がかかるため、股関節形成不全になりやすいと考えられます。
股関節形成不全は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、セントバーナードなどの大型犬に多く見られます。症状が進行すると、手術が必要になったり、術後もリハビリテーションや定期的な通院が必要になったりすることがあります。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
犬の膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨(膝の皿部分)が衝撃などにより本来の位置からずれてしまう状態です。膝蓋骨脱臼は先天性のものもあります。
また、チワワやトイプードルなどの小型犬は、遺伝的要因も考えられます。膝蓋骨脱臼は、比較的小型犬に多く見られますが、中型・大型犬でもなることがあります。
膝蓋骨脱臼は症状の進行により4つのグレードに分類され、重症の場合は手術が必要になることもあるでしょう。
椎間板ヘルニア
犬の椎間板ヘルニアとは、背骨の間にあってクッションの役割をする椎間板が、本来あるべき場所から飛び出し、神経を圧迫している状態です。
椎間板ヘルニアはミニチュアダックスフンドやビーグルなど胴体の長い犬種では遺伝的要因が考えられますが、フローリングで滑った際、腰に負担がかかることも一因だと考えられます
椎間板ヘルニアは症状が進行すると、歩行困難になることもある怖い病気です。
犬がフローリングで滑らないための対策・予防
犬がフローリングの上で生活していると、病気やケガのリスクが高まります。
では、フローリングの床でも愛犬の体に負担をかけないためには、どのような対策方法があるのでしょうか。
ここでは、愛犬がフローリングで滑らないための対策・予防を犬とお家、それぞれに分けて詳しく解説します。
犬への対策
フローリングでかかる足腰への負担は、愛犬に対策することで予防できます。しかし、愛犬への対策は予防効果を高めるためのもので、フローリング自体への対策も必要です。
爪切りや足裏の毛をカットをする
爪や肉球の間の毛が伸びていると余計に滑りやすくなり、踏ん張りがききにくくブレーキ機能が低下してしまいます。
そのため月1回程度、定期的に爪切りや肉球の間の毛をカットしましょう。カットには人間用ではなく犬用の爪切りややすり、バリカンを使用しましょう。
愛犬が嫌がる場合や自分でするのが難しい場合には、動物病院やサロンに頼むと安心です。
滑り止めの靴や靴下をはかせる
愛犬がフローリングで滑ってしまうのを防ぐために、犬用の滑り止め靴下やシューズ、滑り止めシールも販売されています。
底面に、シリコンやゴムでできた滑り止め加工が施してあるのが特徴です。履かせる際は、愛犬に合ったサイズを選ぶことや、嫌がる場合は無理に着用しないことが大切です。
また、肉球は体温調節をしたり汗をかいたりする大切な器官です。1日中履かせていると蒸れてしまうため、時間を決めて履かせましょう。
肉球の保湿をする
犬の肉球はブレーキ機能や衝撃を吸収する、体温調節をする、汗をかくなど重要な器官です。乾燥などで肉球が硬くなったりひび割れたりすると、ブレーキ機能が衰えてしまいます。
愛犬の肉球を健康な状態に保つためには、定期的に肉球の保湿ケアをするのがおすすめです。肉球の保湿ケアは、犬専用の保湿クリームを塗ってあげるとよいでしょう。
肥満の犬にはダイエットもトラブルの予防になる
犬が肥満になると、足腰へかかる負担も大きくなりフローリングで起こる病気やケガのリスクが高まってしまいます。犬の肥満は、ほかの病気の原因にも繋がるため、食事や運動などの生活習慣を見直し、適切な体型を維持することも対策になります。
シニア犬はケガに注意が必要
シニア犬になると老化により骨や関節が弱まったり、肉球の水分が減り、ブレーキ機能が弱まったりします。その結果、フローリングによるトラブルが起こりやすくなり危険です。
シニア犬がいる家庭では、フローリングに対する対策を徹底するようにしましょう。
お家での対策
愛犬が室内で安全に生活するためには、フローリングの床への対策は必要不可欠といえるでしょう。ここでは、フローリングのトラブルから愛犬を守るためにできる、お家でできる対策方法を紹介します。
ワックスを塗る
フローリングが滑りやすい一因として、フローリングに塗ってあるワックスが剝がれていることが挙げられます。
ワックスが剥がれている場合は、再度ワックスがけをすることで対策をすることができます。使用頻度や種類などで異なりますが、6〜12カ月を目安に塗り直すと効果を持続しやすくなります。
油汚れを拭き取る
フローリングに油がついていると、滑る原因に繋がります。特にキッチンなどが滑る場合は、油汚れが原因の可能性があります。
油汚れは調理後すぐにフローリングを拭けば簡単に落とすことができるので、こまめに拭き掃除をしましょう。また、頑固な汚れは中性洗剤を使うことで落としやすくすることができます。
注意点としては、拭き掃除をすることでワックスが剥がれやすくなるため、ワックスが剥がれてきたと感じたらかけ直すなどの工夫が必要です。油や水分が飛び散りやすい場所には、滑り止め効果のあるキッチンマットを敷くことで、拭き掃除をしてもワックスが剥がれることなくおすすめです。
ジョイントマットやカーペットを敷く
カーペットやジョイントマット、コルクシートを敷くことでも、滑り止め対策が可能です。
敷くだけで滑り止め対策ができるので、すぐに対策が必要な際にもおすすめです。カーペットは爪が絡まらないよう、毛の短いものを使用しましょう。
また、ジョイントマットは撥水加工が施されているものも多く、クッション性もあるため愛犬のいる家庭に適しています。食器周りや愛犬のトイレ付近、キッチン回りなど、汚れや濡れやすい場所にもおすすめです。
フロアコーティングをする
フロアコーティングとは、フローリングの床に特殊なコーティング加工を施すことです。プロに頼む必要があることや費用がかかることが欠点ですが、耐久性が長く多様性があります。
フロアコーティングをすることで滑り止め対策ができるほか、ワックスよりも耐久性がある、傷がつきにくい、汚れが落ちやすいなどの利点があります。また、犬が舐めても安全な原料でできているものもあり、カーペットやマットを敷きたくない方にもおすすめです。
高い場所の上り下りはステップやスロープを設置する
ソファやベッドなど高い場所から飛び降りることは、衝撃で愛犬の足腰に負担がかかりよくありません。
また、着地した際硬く滑るフローリングは、捻挫や打撲、骨折などケガのリスクも高まります。段差がある場所には、ステップやスロープを設置するなどして、愛犬がなるべくジャンプをしないよう工夫をしましょう。
また、愛犬がソファなどに乗る場合は、高さの低いものを選ぶことで愛犬にかかる負担を軽減することができます。特に体の小さな小型犬は、ジャンプをする機会が多くなるため注意が必要です。
階段にもマットを敷くなどの対策をする
階段は犬にとっては段差が高く、足腰に負担がかかりがちです。
階段を上り下りする愛犬への対策としては、階段用の滑り止めマットを敷いたり、ペットゲートなどを使用して立ち入り禁止にしたりする方法がおすすめです。愛犬にかかる足腰の負担をさらに減らすためには、階段の上り下りをさせないほうがよいでしょう。
【まとめ】犬の目線に立った環境づくりが大切!
近年、犬の飼育は室内飼いが増えています。
室内飼育の方が外飼いに比べて飼い主さんとコミュニケーションをとる時間を長く確保できたり、温度管理や体調管理がしやすくなる、外に比べて衛生的であるなどの利点があります。
しかし、家庭の床はフローリングを使用していることが多く、犬にとっては滑りやすく危険です。
フローリングは掃除が楽なことや、カーペットやマットは敷きたくない、ワックスは手間暇がかかるなど、どうしても飼い主さん目線で生活環境を決めてしまいがちです。しかし、愛犬家であれば、愛犬の目線に立った環境づくりが望まれます。
愛犬が病気やケガをすると、動物病院へかかる費用や通院、自宅でのケアなど、フローリング対策以上の費用や手間暇がかかってしまうこともあります。それ以上に、愛犬に辛い思いをさせてしまうことになります。
大切な家族の一員である愛犬の健康を守れるのは、飼い主さんだけです。愛犬にいつまでも元気でいてもらうためにも、病気やケガをする前にフローリングへの対策を徹底しましょう。