「シニア期に入った愛犬が急に夜鳴きするようになった…」と困っていませんか?
犬の夜鳴きは飼い主さんの睡眠不足やストレスにつながるうえ、騒音によるご近所トラブルの原因にもなりかねません。
この記事では、老犬が夜鳴きをする主な理由と対処法、おすすめの夜鳴き対策グッズを紹介します。
夜鳴きの原因を探るポイントも解説しているので、「愛犬の夜鳴きの原因が分からない」「原因を知るヒントが知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/動物取扱責任者/犬の管理栄養士/ペットフードアドバイザー1級/少額短期保険募集人
第一種動物取扱業:第225818003号 保管 動物取扱責任者:山本星海
JKC公認トリマー養成機関卒業。Dog salon Star seaを2018年に開業、犬のトリミングやドッグフードの販売を行う。トリマー歴10年目。愛犬:トイプードル2匹
老犬が夜鳴きする6つの理由
昨日まで静かに寝ていた犬でも、ある日突然夜鳴きをすることは珍しくありません。
理由によっては一晩中鳴き続けたり、数時間おきに鳴いたりすることもあるでしょう。
まずは老犬の夜鳴きの主な原因を6つ紹介します。
認知症による症状
老犬の夜鳴きでもっとも多い原因は「認知症」です。
認知症によって脳の機能が損なわれると眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなります。
その結果、一晩中意味もなく鳴き続けたり、認識能力の低下による不安や戸惑いから夜鳴きをしたりするようになるのです。
なお、犬が認知症になると何度も食事を欲しがったり、ぐるぐると同じところを徘徊するようになったりします。
そのほか、飼い主からの呼びかけに反応せずぼーっと過ごすことが増えたり、感情の起伏が激しくなり突然噛みついたりといった行動も、認知症の典型的な症状といえるでしょう。
犬の認知症は早くて7~8歳から見られ、11~15歳頃になると発症する割合が多くなります。
寂しさや不安がある
飼い主さんに甘えたい、側にいてほしいという気持ちから夜鳴きをするケースもあります。
加齢により聴覚や視覚が衰える老犬期では、若い頃のようにうまく周囲の状況をつかめず、さまざまな不安を感じやすくなります。
特に引っ越しや新しく同居犬を迎えたときなど、環境の変化があったときはストレスや不安から夜鳴きがみられやすいでしょう。
人間には聞こえない小さな音を察知し、「不審な音が聞こえた」と飼い主さんに訴えている可能性も考えられます。
体の不調や痛みがある
若い頃にくらべて、老犬期は身体の不調を感じることも多くなります。
関節炎による足腰の痛みやこわばり、歯周病による口腔内の炎症などは犬にとって大きな苦痛です。
寝たきりの犬の場合、身体の一部が圧迫され血流が悪くなることでできる「床ずれ」が原因で、強い痛みを感じているかもしれません。
もし愛犬の身体を触ったときに「キャン」と悲鳴のような声で鳴いたり、触ろうとすると嫌がったりするなら、なにかしらの不調が隠れている可能性があります。
喉のかわきや空腹を感じている
喉がかわいた・お腹が空いたなど、生理的欲求を我慢できず鳴いている可能性もあるでしょう。
「昔は聞き分けが良かったのに、歳とともにわがままになった」というケースは多々あります。
人間も歳を取ると頑固になったり怒りっぽくなったりするといいますが、それは犬も同じ。
判断力の低下から「朝まで我慢しよう」などのような自制心が働かなくなり、自分中心の考えで要求吠えをするようになる犬も珍しくありません。
また、加齢による足腰の衰えから食器のある場所に自力で移動するのが難しく、助けてほしいと鳴いている可能性も考えられます。
いずれも飼い主さんに対する要求からくる夜鳴きなので、適切な対処が必要です。
トイレに行きたい
生理的欲求のひとつである排泄も、老犬が夜鳴きする理由として挙げられます。
老犬になると加齢により膀胱や尿道の機能が衰え、排尿を我慢できなくなります。
まだ少ししか溜まっていないのにすぐ排泄したくなり、何度もトイレに行くようになるのです。
また、腎機能が低下すると尿を濃縮する機能がうまく働かなくなり、尿量の増加とともにトイレの回数も増えていきます。
愛犬が夜過ごす場所にトイレがなかったり、トイレまで距離があったりする場合は、「トイレに行きたい」と訴えているのかもしれません。
睡眠環境が気に入らない
睡眠環境が悪く、なかなか寝付けないのかもしれません。
たとえば室内が暑い・寒い、じめじめしているなど気温や湿度に関するものや、ベッドが汚れている・ベッドが薄くて寝心地が悪いなど寝床に関するものなど、その理由はたくさんあります。
日中は問題なく過ごせていても、深夜になると冷え込みが厳しかったり、朝日が差し込んで眩しかったりすることはないでしょうか。
もともと老犬は加齢による体内時計の変化から眠りが浅くなりやすいので、睡眠環境に不満があると夜鳴きがみられることもあります。
愛犬の夜鳴きの原因はなに?3つのチェックポイント
夜鳴きの対処法は複数ありますが、愛犬が鳴いている理由に合った方法を行わなければ、効果はありません。
愛犬の夜鳴きに対処するときは、「なぜ夜鳴きをしているのか」よく考えることが大切です。
愛犬の夜鳴きの原因を見極めて、正しい対処法を実践しましょう。
単調に鳴き続けるか
認知症が原因の夜鳴きには、「一本調子で単調に鳴き続ける」という特徴があります。
抑揚のない遠吠えのような鳴き方で一旦止んだと思ってもしばらく経つと鳴きだすことを繰り返すので、対処のしようがないと疲れてしまう飼い主さんが多いでしょう。
また、短時間鳴く場合は悲鳴のような声で鳴くこともあります。
日中寝ていないか、運動不足でないか
日中はぐっすり寝ていて、夜中の決まった時間になると夜鳴きが始まるなら、生活リズムの乱れによる昼夜逆転が起きているかもしれません。
また、普段寝たきりの犬では、「立ちたい」「歩きたい」という要求で吠えている可能性もあるでしょう。
運動能力や体力が衰える老犬期はどうしても発散不足になりやすいので、日中の過ごし方を見直すことが大切です。
食べさせたり構ったりすると鳴き止むか
ワンワンとはっきり鳴く場合は、「構って欲しい」「何か食べたい」「歩き回りたい」といった欲求の現れです。
おやつや水をあげると夜鳴きがおさまるなら、空腹やのどの渇きが原因。
声を掛けたり撫でたりすると落ち着くなら、それは寂しさや不安からくる夜鳴きと考えられます。
一方、「なにをしてもおさまらない」「しばらくするとまた鳴きだす」場合は、身体の不調が原因の可能性が高いでしょう。
老犬が夜鳴きするときの対処法6つ
老犬が夜鳴きする理由は、飼い主さんに対する欲求がほとんどです。
では、老犬が夜鳴きするときはどのように対処すればいいのでしょうか。
老犬の夜鳴きの対処法は、主に以下の6つです。
生活リズムを整える
昼夜逆転による夜鳴きを防ぐには、生活リズムを整えることがなにより大切です。
活動量が減る老犬期では日中寝ている時間が増えがちですが、長時間の昼寝は生活リズムが乱れる原因になります。
愛犬が昼間ぐっすり寝てしまう場合はおもちゃを使って一緒に遊んだり、こまめに声をかけたりして、なるべく眠らせないようにしましょう。
無理のない範囲で散歩に連れ出すことも重要です。
朝日を浴びるとセロトニンやメラトニンといった生活リズムを整えるホルモン物質が分泌され、一晩中よく眠れるようになります。
外の匂いを嗅いだり、色々な音を聞いたりするだけでも良い刺激になるので、ぜひ積極的に外出してくださいね。
認知症の場合は好きなだけ徘徊させるのも有効
認知症の犬では同じ場所をぐるぐる回る「徘徊」がみられることも多く、どこかにぶつかったり、無理に止めたりすると夜鳴きするというケースもあります。
そんなときはビニールプールやサークルなどを活用して、好きなだけ歩けるようにしてあげるのがおすすめです。
寝たきりの場合は四輪の車イスに乗せてあげるなど、歩き回れる工夫をしてあげましょう。
食事や睡眠環境を見直す
「寝る前になにか食べさせる」「部屋の温度・湿度を調整する」「トイレは行きやすい場所に設置する」など、犬に不満を感じさせない環境作りも欠かせません。
食器の位置や高さは日中の様子をみて調整し、自力で飲み食べしやすいようにすること。
老犬になると寝返りを打つのも大変なので、長時間同じ体勢でも体が痛くならないよう、寝床はクッションや毛布でふかふかにしてあげましょう。
夜お腹が空いて夜鳴きをする場合は、食事の回数を増やして対応します。
寝る前にお水を飲ませたりおやつタイムを設けたりするだけでも、朝まで静かに寝てくれる確率は上がりますよ。
犬の近くや一緒の部屋で眠る
寂しさや不安から夜鳴きしている場合は、犬が飼い主さんの存在を確認できる場所で眠るという方法もあります。
寝室にケージを移動したり、ケージの横に布団を敷いて眠ったり、飼い主さんの負担にならない方法を考えてみましょう。
誤飲癖がない愛犬であれば、飼い主さんの匂いがついた服や毛布を与えるのもいいですね。
照明を落とすと鳴く場合は暗闇を怖がっている可能性があるので、ベッドサイドランプや間接照明をつけるようにします。
また、音に敏感な場合は小さな音でラジオを流しておいたり、カチカチと音が鳴る時計を近くに設置したりするのも効果的です。
動物病院で薬やサプリを処方してもらう
動物病院に相談して、犬の夜鳴きを抑えるための薬やサプリメントを処方してもらいましょう。
夜鳴きに対して処方される薬は、抗不安薬と睡眠導入剤の大きく2つに分けられます。
また、DHAやEPAには認知症の症状を改善する効果が期待できるといわれており、夜鳴き解消のサポートアイテムとして広く利用されています。
持病があっても飲めるものもあるので、かかりつけの獣医師と相談しながら与えてみても良いでしょう。
老犬ホームやペットホテルに預ける
飼い主さん自身が疲れ果ててしまわないよう、ときには老犬ホームやペットホテルなどを頼ることも大切です。
老犬ホームというと「生涯預けなければいけない」とイメージしている人もいるかもしれませんが、多くの老犬ホームでは一時預かりから長期預かりまで幅広く対応してくれます。
現状を冷静に見直し、気持ちをリフレッシュするためにも、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
近所迷惑にならないよう対策をする
夜鳴きへの直接的な対処と並行して、近所迷惑への対策も必要です。
昼にくらべて夜は音が大きく響きやすく、思ったよりも遠くまで犬の夜鳴きが届いていることがあります。
防音マットや防音カーテンなどで音を遮断したり、近所を回って「犬が鳴いてしまって申し訳ない」とお詫びの気持ちを伝えたり、できる範囲の配慮をしましょう。
なお、防音グッズについては「老犬の夜鳴き対策グッズ5選」で詳しく紹介しています。
老犬の夜鳴きに対処するときの注意点
老犬の夜鳴きに対処するときは、以下の3点に注意しましょう。
それぞれ詳しく解説します。
叱ったり無視したりしない
夜鳴きをするからといって、叱ったり無視したりするのは逆効果です。
成犬のしつけでは「無視」が有効な場面も多々ありますが、自制心や判断力が低下した老犬の場合はうまくいかないことも多々あります。
体の不調や認知症、排泄欲求など、犬自身どうすることもできない理由で鳴いているケースも多いので、まずは一旦冷静になることが大切です。
薬やサプリは自己判断で使わない
夜鳴き対策に使える薬やサプリメントは複数ありますが、自己判断で与えるのは良くありません。
持病や服用中の薬との相性によっては効果が現れなかったり、体調を崩してしまったりする可能性も考えられます。
薬やサプリメントを選ぶときは必ずかかりつけの獣医師によく相談し、愛犬に合ったものを処方してもらいましょう。
飼い主さん自身が体調を崩さないようにする
夜鳴きのストレスや睡眠不足が続くと、体調を崩してしまう人は多いもの。
飼い主さんが疲れ果ててしまうと、犬はおろか飼い主さん自身の生活まで成り立たなくなります。
老犬ホームの一時預かりやデイケアを利用したり、一泊旅行や趣味を楽しんだりして、適度に心身をリフレッシュしてくださいね。
上手に活用して!老犬の夜鳴き対策グッズ5選
最後に、老犬の夜鳴きにおすすめのグッズを5つ紹介します。
鳴き声の広がりを抑えるアイテムから夜鳴き軽減効果が期待できるアイテムまで幅広く紹介するので、「夜鳴きで近所に迷惑がかからないか気になる」「愛犬を落ち着かせるグッズがないか知りたい」という方は、ぜひチェックしてください。
ペット用防音室
ペット用防音室は、鳴き声が周囲に漏れないよう工夫されたペットハウスです。
まったく聞こえなくなるわけではありませんが、音の大きさはかなり小さくなるので夜鳴きによる寝不足で悩んでいる方におすすめ。
こちらの「ワンだぁールーム」は中の温度が上がりすぎないよう換気システムを備えており、室内と同じ環境で快適に過ごせます。
酸化チタンをコーティングすることで、臭いや有害物質も吸着・分解してくれる優れものです。
ほかにも、遮音強化ガラスを使ったペット用防音室やレンタル専用の「防音犬小屋レンタくん」といった商品もありますよ。
防音ケージカバー
ケージの周りに音を吸収する吸音材や防音効果のあるカバーを設置するのもおすすめです。
こちらは現在使っているケージを防音パネルで囲える「防音ケージカバー5」という商品です。
開口を全開にすればケージの出し入れもでき、日々のお世話もしやすいのが特徴。
底面にはストッパー付きのキャスターがついていて、移動も簡単です。
防音カーテン
窓から音が漏れるのを防ぐには、音を伝わりにくくする防音カーテンがおすすめ。
防音カーテンは音を遮るための特殊な加工が施されており、部屋からの音漏れを防ぐ効果が期待できます。
五重構造防音カーテン「コーズ」は、音を遮断する遮音布と音を吸収する吸音布を組み合わせて作られた防音効果の高いカーテン。
ヒダをなくすことで隙間からの音漏れを防いでくれるうえ、夏は外からの「熱」、冬は「冷気」を遮ってくれます。
外からの光をほとんど通さない「遮光1級」なのも嬉しいです。
防音フロアマット
防音フロアマットを敷けば階下に音が伝わりにくくなり、ご近所トラブルの回避に繋がります。
ラグ・カーペットタイプの防音マットはインテリアになじむものも多く、気軽に設置できるのが特徴です。
より高い防音を期待するなら、厚さ11mm以上の厚手タイプがおすすめです。
ただし、犬の爪が引っかからないよう、パイルがループ状のものは避けましょう。
リラックス効果が期待できるアイテム
リラックス効果が期待できるアイテムは、不安や緊張、恐怖や不安からくる夜鳴きにおすすめです。
効果を実感できるかは犬によって違いますが、薬のように副作用の心配がないのは大きな魅力。
「レスキューレメディ」は花や草木など自然の植物から作られたリラックスアイテムで、気持ちをリラックスさせたいときに飲ませる、体につける、スプレーするなどの方法で使用します。
イギリスでは薬局などでも取り扱いがあり、日本でも「夜鳴きする老犬に使ったらグッスリ寝てくれた」という声もあるので、興味がある人はチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
老犬の夜鳴きの原因は認知症や空腹、のどの渇き、寝床の環境が悪いなどさまざまです。
なかには体調不良や身体の痛みを訴えているケースもあるので、「わがままだろう」と決めつけないことが大切。
原因を探るときは、鳴いているときの様子はもちろん、日中の過ごし方も参考にしましょう。
なお、認知症による夜鳴きの場合、飼い主さんの努力ではおさまらないことも少なくありません。
時間が経つほど悪化する可能性もあるので、気になる様子があるときはなるべく早く動物病院を受診しましょう。
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