「愛猫が水を飲まない」と悩んでいる飼い主さんは多いのではないでしょうか?
猫はあまり水を飲まない動物とはいえ、飲水量が減ることで脱水症状や尿路結石症などさまざまな問題が生じます。
なかには命にかかわる深刻な病気の引き金になってしまう場合も。
そこで今回は、猫はなぜ水を飲まないのか、1日に必要な飲水量は、飲んでもらうためにはどうした良いのかを紹介します。
保有資格:愛玩動物救命士|猫疾病予防管理士|猫健康管理士|犬猫行動アナリスト|ペット災害危機管理士3級|猫のシニア生活健康アドバイザー|ペットフード/ペットマナー検定
犬猫専門フリーライター。「犬猫のために書く」をモットーに多数のペットメディアで執筆中。
目次
猫は水をあまり必要としない動物だった
猫は水をあまり飲まなくても生きていける動物です。
というのも、猫の祖先であるリビアヤマネコが砂漠地帯で暮らしていたことに由来しています。
乾燥した砂漠地帯では、水分補給といえば、捕獲した小動物から得られるごく少量の水分がメインでした。
そのため、猫は体内の少ない水分を効率的に使用できるように体が進化したのです。
しかし、まったく水を飲まなくても良いと言うわけではありません。
体内の水分が不足すると、脱水症状や泌尿器系の疾患の原因になります。
また、体内の水分が10〜20%ほど失われると命にもかかわります。
猫は水をあまり必要としない動物ですが、生きていくためには水が欠かせないのです。
猫が水を飲まない5つの原因
猫は食事に対するこだわりが強いと言われていますが、実は飲み水にもこだわりを持っています。
猫が水を飲まない理由は、器や置き場所が気に入らない、口が痛い、水が新鮮じゃないなどさまざまです。
それでは、猫が水を飲まない原因について詳しく見ていきましょう。
器が気に入らない
猫が器を気に入らない原因としては、以下のことが考えられます。
- 器の材質が気に入らない
- 器の大きさと形状が合わない
- 器が低くて飲みにくい
とくに、ステンレス製の器は、写り込む自分の姿が気になる、怖いと感じる猫もいるようで、好みが分かれます。
器の大きさや形状、高さも飲みやすさに影響します。
猫は水を飲む際にヒゲが器に触れることを嫌がりますので、ある程度の広さがある浅めの器が好まれるでしょう。
また、食道の形状から、高さの低い器は水が飲み込みにくいと言われています。
置き場所が気に入らない
猫は水の器の置き場所にもこだわりがあります。
たとえば、次のような場所は避けたほうが良いでしょう。
- ご飯の隣り
- トイレの近く
- 大きな音が出る家電の近く
野生のネコ科動物は、食事場所の近くでは水を飲みません。
獲物の血や毛が水に入ってしまうため不衛生になりがちだからと考えられています。
その習性は、イエネコにも受け継がれており、本能的にご飯の側の水は飲まないようです。
また、猫は大きな音が苦手なので、テレビや洗濯機などの音が出る家電の側も落ち着いて水を飲むことができません。
病気や口腔内の異常
猫が水を飲まない原因には、病気による体調不良や口腔内の異常があります。
体調不良で水が飲めないときは、かなり状態が悪いと考えられます。
また、口の中のケガや歯周病などの痛みから水を飲む量が減ったり、飲めなくなったりすることもあります。
口腔内に異常がある場合は、同時に食欲不振やよだれ、口臭が強いなどの症状が見られるでしょう。
気になる症状があるときは、早めに動物病院を受診してください。
水が冷たい、新鮮じゃない
「猫も暑い日は冷たい水が飲みたいのでは?」と思うかもしれませんが、実は温かいほうが良いと言われています。
猫は生きた小動物などを狩って食べていました。
そのため、冷たい水よりも獲物の体温に近い温度のぬるま湯を好むといいます。
冷たい水は体を冷やしたり、下痢の原因になることもあるので、避けたほうが無難でしょう。
また、猫は汲んでから時間の経った水を飲みたがらない場合もあります。
猫は水の味が分かると言われていますので、新鮮さも判断できるのかもしれませんね。
食事で水分量が足りている
ウェットフードを与えている猫は、わざわざ水を飲まなくても水分量が足りている可能性があります。
たとえば、水分量が80%のウェットフードを1日250g与えた場合、食事だけで200mlもの水分を摂取できます。
これは、体重4kgの猫が1日に必要とする飲水量に匹敵します。
猫は必要な水分量を食事から摂れていると、あえて水を飲もうとしませんので、飲んでいないと感じてしまうかもしれませんね。
また、ふやかしたドライフードを与えてる場合も必要な水分量を満たしている可能性があります。
猫が水を飲まないとどんなリスクがある?
猫は水をあまり飲まなくても生きていける動物です。
しかし、水分が足りなくなると脱水症状や、泌尿器系の疾患のリスクが高まります。
それぞれの病気についてポイントを絞って解説します。
脱水症状の原因になる
水分の摂取量が不足すると脱水症状を引き起こす原因になります。
とくに、子猫や高齢の猫は高リスクとされていますので注意が必要です。
脱水症状は重症化すると命にもかかわりますので、なるべく早い段階で治療につなげることが重要になります。
そのために、猫の脱水症状のおもな症状を覚えておきましょう。
- ぐったりしている
- 呼吸が荒い
- 目が落ちくぼむ
- 食欲低下
- 尿の回数が減る
- 皮膚の弾力がなくなる
また、脱水症状かどうかを見分ける方法として「テントテスト」があります。
首の後ろの皮膚をつまんで手を放したときに戻るまでの時間で判断します。
水分が足りていればすぐに戻りますが、 詰まんだままの形やゆっくり戻るときは水分が不足している状態です。
泌尿器系の疾患に注意
猫は水分摂取量が少ないと尿路結石症や膀胱炎、慢性腎不全など泌尿器系の病気にかかりやすくなると言われています。
そのなかでも多いのが、尿路結石症です。
尿路結石症とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道に結晶や結石ができて、膀胱や尿道を傷つけたり、詰まったりする病気です。
水分量が減ると、濃度の濃いおこしっこが膀胱に長時間とどまることになり、尿石ができやすい状態になります。
尿路結石症のおもな症状次のとおりです。
- おしっこの回数が増える
- 血尿が出る
- トイレ以外で排泄する
- トイレに入るのにおしっこが少ししか出ない
- おしっこにキラキラした結晶や結石が混じる
尿路結石症を放置すると、膀胱が炎症を起こして膀胱炎を引き起こすリスクがあります。
また、水分不足は高齢の猫に多い慢性腎不全のリスクを高めるとも言われています。
多飲多尿が見られたら慢性腎不全の可能性を疑いましょう。
猫が1日に必要な飲水量
猫が1日に必要な飲水量は、体重1kgあたり50〜55ml程度とされています。
体重ごとの1日に必要な飲水量の目安は以下となります。
ただし、1日に必要な飲水量は、体重以外にも食事、室温、運動量などによって左右されますのであくまでも参考と考えてくださいね。
体重 | 2kg | 3kg | 4kg | 5kg |
飲水量 | 100〜150ml | 150~165ml | 200~220ml | 250~275ml |
飲水量は、食事から摂取する水分も含まれます。
たとえば、体重4kgの猫が水分量80%のウェットフードを200g食べている場合、ウェットフードに含まれている水分量は160mlです。
不足分の40〜60mlの水をドライフードもしくは、飲み水から摂取すればOKということになります。
猫の1日の飲水量を調べる方法
猫が1日に必要とする飲水量がわかったところで、愛猫が実際にどれくらい飲んでいるのか確認してみましょう。
1日の飲水量を知ることで、水分が足りているのか、またどれくらい不足しているのかを知ることができます。
食事から摂取している水分量の確認方法
食事からどれくらいの水分を摂取しているのか知るには、ウェットフードとトライフードからどれくらい水分を摂取しているかを確認する必要があります。
一般的に、ウェットフードの水分含有量は80%、ドライフードは10%ほどとされています。
そのため、ウェットフードのみを与えている場合は、1日に必要な飲水量の多くを食事から摂取できている可能性があるでしょう。
実際に食事から摂取している水分量は以下の方法で求められます。
たとえば、水分含有量80%のウェットフードを110g、水分含有量10%のドライフードを35g与えている場合の水分量の計算式は以下となります。
110×0.8+35×0.1=91.5g
水1g=1mlですので、食事から摂取している水分量は合計で91.5mlとなります。
器から飲んでいる水分量の調べる方法
愛猫が器から飲んでいる水の量は以下の手順で簡単に知ることができます。
- 1日分の水を計測して器に入れる
- 24時間後に残っている水の量を計測する
- 最初に入れた水の量から、残っている水の量を引く
さらに、食事から摂取した水分量を足すと、1日の飲水量がわかります。
ただし、この方法では蒸発した水分も飲んだ量に含まれてしまいます。
正確に計測する場合は、器を2つ用意し、ひとつに網を掛けるなどして飲めないようにします。
24時間後に網をかけた器から減った分が蒸発した水分量です。
蒸発した分を飲む用の水の残りに足すと、正確な飲水量がわかります。
猫が水を飲まないときの6つの対処法
猫が水を飲まない原因とそのリスク、必要な飲水量についてお話してきました。
では、飲水量が足りていないときはどうしたら飲んでくれるようになるのでしょうか?
水を飲まない猫に飲んでもらうための6つの方法を紹介します。
自動給水器を使う
流れる水が好き、新鮮な水が好きという猫の場合は、自動給水器がおすすめです。
水が流れているだけで飲んでくれる猫もいます。
また、水道水に含まれているカルキの臭いを嫌う猫もいます。
そのような猫には、不純物をろ過してくれる浄水機能付きの自動給水器を試してみるのが良いでしょう。
自動給水器は常に新鮮な水を飲むことができるので、水にこだわりのある猫も飲んでくれる可能性があります。
水飲み用の器を変える
猫は器が気に入らないというだけで水を飲まない場合があります。
そのようなときは、器を変える必要があるでしょう。
おすすめは、陶器製で背の高い器です。
陶器製であれば、ステンレス製の器の写り込みが気になる猫も安心して水を飲めます。
また、陶器製の器は傷がつきにくく、煮沸消毒や漂白剤を使用した消毒なども可能なため衛生面でも安心です。
水飲み場の数を増やす
水の器はひとつよりも数箇所に設置するほうが水を飲むようになる猫もいます。
水を置いている場所が気に入らなくて飲まない猫にも有効な方法です。
器の置き場所は、猫の導線に合わせて設置するのが良いでしょう。
たとえば、トイレからベッドまでの間、お気に入りの場所の側などがおすすめです。
可能ならば、器の素材や大きさ、高さを変える、自動給水器と普通の器を置くなどして好みを探るの良い方法です。
水の温度と鮮度に注意する
野生の猫は生きた獲物を狩って食べていたため、冷たいものを食べる習慣がありませんでした。
そのため、イエネコとなったいまでも冷たい食事を好みません。
獲物の体温に近い38度程度の温かさの食事を好むと言われています。
水も同様で、冷たいものよりもぬるま湯を好む猫が多いようです。
また、汲んでから時間の経った水を嫌がる猫もいます。
最低でも朝夜の2回は水を交換し、新鮮な水を飲めるようにしましょう。
好みの味のスープを与える
どうしても水を飲んでくれない猫には、猫が好きな味のスープを与えるのもおすすめです。
味付けをしていない鶏肉や魚などのゆで汁を薄めて飲ませたり、水に混ぜたりするだけで飲んでくれる猫もいます。
ポイントは、好物や好きな肉または魚を使うことです。
ウェットフードやちゅーるなどのスティックタイプのおやつをぬるま湯に溶かして与える方法もあります。
愛猫の好みに合わせて工夫してみましょう。
ウェットフードを与える
ウェットフードは水分が豊富に含まれていますので、食べるだけで簡単に水分補給ができます。
ウェットフードにぬるま湯を足すことで、さらに水分の摂取量を増やせます。
水をあまり飲まない猫でも、1日に必要な水分量の大半を摂取できるでしょう。
また、食べ慣れたいつものドライフードをぬるま湯でふやかして与えるだけでも水分補給になります。
とくに、固いフードを食べるのが難しい高齢の猫におすすめな方法です。
そのほか、市販の水分補給用のスープや猫用のミルクなどを使用するのもおすすめです。
まとめ
猫にとって水は生きていくうえで欠かすことのできないものです。
ところが、猫は水をあまり飲まなくても生きていけるように体が進化しているため、積極的に水を飲まないと言います。
とはいえ、飲水量が少ないとさまざまな病気の原因になる可能性があるため注意が必要です。
今回、紹介した水を飲ませる方法を参考に、しっかりと水を飲んでもらえるようにしましょう。