猫になぜタウリンが必要なのか?必要量も徹底解説!

猫 見つめる

みなさんは「タウリン」という成分をご存じでしょうか?栄養ドリンクの成分として身近に使われており「タウリン○○mg配合!」などのキャッチコピーと共にCMや薬局・コンビニなどでよく見かけるので馴染みが深い成分だと思います。

そんなタウリンですが、猫ちゃんが健康に生きる上で非常に大切な成分です。

この記事では猫にとってのタウリンの必要性や不足するとどうなるかを解説していきます!

タウリンとはどんな栄養素?

私たちの体・細胞を構成するタンパク質は複数の「アミノ酸」という物質が集まったものです。タウリンはそんなアミノ酸の一種であり、人間を含めた哺乳類にとって非常に重要な働きをしています。

タウリンは肉類や魚介類に多く含まれる成分であり、目や心臓や肝臓など様々な臓器に分布し、体の働きを正常に整える作用をもっています。

栄養ドリンクに含まれるタウリンがどのような作用で疲労回復につながるか正確な理由はまだ解明されていませんが、身体のホメオスタシス(恒常性/バランスよく機能すること)を維持する働きによるものではないかと考えられています。

猫にとってなぜタウリンは必要なのか

生体内で大切な働きをするタウリンですが、なぜ猫には特に大切なのでしょうか?

その理由は猫のタウリンの合成能にあります。

人間はタウリンを体内で合成することができるのに対し、猫は体内で合成することがほとんどできません。よってタウリンを食事からしっかりと摂取する必要があります。

猫は肉食動物なので野良猫の場合は野生のネズミ・鳥などの肉類を内臓までしっかり食べることでタウリンを補給することができます。

飼われている猫の場合、食事はキャットフードがメインになってきます。

現在は「ペットフード安全法」といわれる法律があるため、猫が必要とされる栄養要求量をしっかりとみたしたフードが販売されています。

基本的には「総合栄養食」を規定量与えていればタウリン不足になることはありません。

猫のタウリンの必要量

では実際に猫はどのくらいのタウリンを摂取すればいいのでしょうか?

FEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)によるとドライフード100g中に0.1gのタウリン、ウェットフード100g中には0.25gのタウリンが含まれることがガイドラインとして設定されています。そのぐらいの量を目安に摂取することが望まれます。

ただし、先ほど述べたようにほとんどのキャットフードはタウリンを含め必要栄養量の基準を満たしています。

よってしっかりとキャットフードを与えている場合は飼い主さんが細かくタウリン量を計算する必要はありません。

タウリンが不足することによって起こる猫のタウリン欠乏症とは

猫のタウリン欠乏症により引き起こされる主な病気を以下にあげます。

①拡張型心筋症

タウリン欠乏症による発症する病気の中でも最も有名なものです。

現在、飼い猫の食事はキャットフードを与えるのが常識となっていますが、昔はそもそも猫にキャットフードを与えている家庭が少なく、日本においては白米にお味噌汁をかけたいわゆる「猫まんま」や人間の食事の余りを与えていることが多かったため栄養不良がよくみられました。

特に「拡張型心筋症」という心臓病が多くみられました。これは心臓の筋肉が収縮する力が低下し、全身に上手く血液を送れなくなる病気です。

初期は無症状のことが多いですが、進行するにしたがって最終的に心不全となります。

心不全になると肺や胸に水が溜まり呼吸困難などで亡くなってしまうことがほとんどです。

昔はこの心臓病は原因不明とされ、根本的治療・解決策が不明でした。しかし、1987年に海外の大学病院が拡張型心筋症にかかっている猫を調査したところ、多くの猫に「食事中のタウリンが不足している」という共通事項がみられました。

そこで、拡張型心筋症と診断された猫に対して試験的にサプリメントによりタウリンを経口補給したところ多くの猫の心臓の機能が回復しました。

この発見をきっかけとして猫におけるタウリンの重要性が広く認知されるようになり、キャットフードには必ずタウリンが添加されるようになったのです。

現在ではこの病気がみられることはほとんどなくなっています。

過去に多くの猫を苦しめた原因不明の病気が、食事によって予防できるようになったというのは大きな功績ですね。

タウリン不足以外でも遺伝性・原因不明で起こることはあるので適切な栄養管理をしていても発症する可能性はあります。

②進行性網膜萎縮症

網膜は目から入ってきた映像を映し出すスクリーンの役割を持っています。

タウリンはこの網膜の機能維持に関与しているため、タウリン不足になると網膜が徐々に萎縮して機能が失われていき最終的には失明してしまいます。

また、網膜萎縮が起こることで眼のレンズである「水晶体」の変性が起こり白内障になりやすくなります。

白内障になると他の眼科疾患も併発しやすくなり、ぶどう膜炎や緑内障などになると目に痛みが伴うこともあります。

拡張型心筋症と異なり、この病気は発症してしまうとタウリンを摂取させても視力が回復することは難しいです。

③繁殖障害・胎子の発育異常

タウリンは正常な繁殖・胎子の発達に必要不可欠な成分です。

タウリン欠乏症は胎子の死亡、流産、発育遅延を引き起こすということが確認されています。

特に妊娠・授乳期は通常の状態よりさらに多くの栄養を必要とします。適切な食事管理がなされないとタウリン以外の他の栄養素も不足してしまい場合によっては母体にも危険性が及ぶことがあるので注意が必要です。

現在は猫の飼育方法が飼い主の中にもしっかりと浸透し、きちんとした食事管理が行われるようになった為これらの病気はほとんどみられることはなくなりました。

ただし、キャットフード(総合栄養食)を食べさせずにオヤツだけを与え続けたり、不適切な手作り食を与えていると病気になるリスクが高まりますので注意が必要です

猫がタウリンを過剰摂取するとどうなるの?

キャットフードをメインで与えている場合は、タウリンが欠乏することも過剰摂取になることも基本的にありません。

それではサプリメントなどでタウリンを過剰摂取した場合はどうなるのでしょうか?

実はタウリンは不要な分はおしっこで体外に排泄されます。つまりサプリメントなどで仮に過剰摂取が起こっても重篤な症状がでることはまずないので安心してください。

ただし、サプリメントの中にはタウリン以外に他のビタミンや成分などを混ぜたものが販売されていることがあります。

タウリンは過剰摂取をしても多くの場合問題ありませんが、脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E)などは過剰摂取をすると排泄されず体内に残り、場合によっては重篤な症状を引き起こすので注意が必要です。

サプリメントを与える場合は表記されている推奨量を守るようにしましょう。

猫ちゃんは病気などの理由により食欲がおち、キャットフードを食べなくなってしまう子も少なくありません。

そのような場合はオヤツやササミなどの好物とサプリメントを上手く組み合わせて栄養不足にならないようにしてあげましょう。

また、サプリ以外でタウリンを補充させたい場合タウリンが豊富な魚介類を与えようと考える飼い主さんもいるかもしれませんが猫に魚介類を与える場合は注意が必要です。

以下は猫に与えない方がいい魚介類の例です

・イカ、タコ、甲殻類(カニ、エビ)

生で食べると猫はビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性あり

・アワビ、サザエなどの貝類

光線過敏症を引き起こし、光が当たりやすく皮膚が薄い部位=耳の皮膚炎などにつながります。「アワビを食べると猫の耳が落ちる」という言い伝えは、これから生まれました。

・アジ、サンマ、イワシなどの青魚

大量に食べることで黄色脂肪症という病気を引き起こす可能性があります。これは皮下脂肪や内臓脂肪に炎症がおこる病気です。

また、生の青魚にはアニサキスを代表とする寄生虫がいますので注意が必要です。

鶏肉や牛肉などの肉類は基本的にしっかり加熱をして与えれば問題ないですが、魚介類は種類によっては猫の体に害を与えるものもありますので気を付けましょう。

タウリンと猫の腎臓病が関係しているって本当?

結論からいうと直接的には関係ないです。

猫は高齢になると慢性腎臓病になる子が多いです。腎臓病が進行した場合はタンパク質を制限した腎臓用療法食を与える必要がでてきます。

これは、腎臓病により多くなってくる血液中の毒性物質はタンパク質を分解されることで発生するためです。

よって、より進行した腎臓病の子は低タンパク食の腎臓療法食が治療として薦められます。ただし、タンパク質を無闇に制限すればいいというものではありません。

タンパク質は体を構成する物質の元となるため食事からのタンパク質を過度に制限すれば正常な細胞を生成・維持・再生するための材料がなくなってしまいます。

獣医師の指導のもと適切な時期に、適切な「療法食」を与えていれば問題になる事はほとんどありませんが、中にはこれを間違って解釈してしまい過度なタンパク質制限を行ってしまう飼い主さんもいます。(肉類を過度に制限した手作り食を与えるなど)

結果的に食事から摂取するタウリンを含めたアミノ酸が不足するため、腎臓を構成する細胞の栄養が不足したり、腎臓の機能を助ける働きを持つ成分が上手く作れなくなり腎臓病がより悪化する可能性はあります。

タウリンが直接関係するのではなく、不適切な栄養管理が腎臓病の悪化に関与する可能性はあるので気を付けましょう。

まとめ

猫にとってのタウリンの重要性について解説させていただきましたがいかがだったでしょうか?

栄養学が発達することで予防できる病気も増えてきました。タウリンはその代表的成分とも言えます。不足しないように適切な食事管理を心がけて愛猫が健康的な生活を送れるようにしてあげましょう。

専門家がキャットフードを調査している

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山本 星海Dog salon Star sea オーナー
この記事を書いた人 保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/第一種動物取扱業登録/動物取扱責任者 JKC公認トリマー養成機関で2年犬や猫に関する様々な知識や技術を学び、多数の資格をとる。トリミングサロンStar seaを経営。