猫が体を痒がっている姿をみたことはありませんか。猫の皮膚は人の皮膚に比べて薄く、全身に被毛が生えているため、皮膚病も発症しやすいです。皮膚炎はすぐに命に関わる状態になることは少ないですが、早めに治療を行わなければ、進行し完治までに時間がかかってしまうことがあります。
ここでは、猫の皮膚病の一覧や原因、治療法、自宅でのケアについてご紹介します。
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/第一種動物取扱業登録/動物取扱責任者
JKC公認トリマー養成機関で2年犬や猫に関する様々な知識や技術を学び、多数の資格をとる。トリミングサロンStar seaを経営。
猫の皮膚病とは?
猫は全身が被毛で覆われているため、皮膚病になっていても見つけにくいです。皮膚病は皮膚に炎症が起き、痒みが起きることが多く、発見が遅れると皮膚が傷つき完治が遅れてしまう傾向があります。さらに、皮膚の痒みは猫が我慢することも難しく、ストレスも溜まってしまいます。
皮膚病は見つけづらく、すぐに命に関わる状態になることが少ないため、動物病院の受診も様子をみてしまいがちですが、早めに処置を行うことで治療にかかる期間も短くなります。そのため、皮膚病を見つけた時には早めに動物病院を受診することをおすすめします。
猫の皮膚病一覧
猫の皮膚病には病気によって、原因や症状も似ていることもありますが、少しずつ異なります。そのため、似たような症状でも原因が異なるケースもあります。
ここでは、猫の代表的な皮膚病についてご紹介します。
マラセチア症
猫のマラセチア症とは、マラセチアという真菌が猫の体調不良などにより増殖してしまい、皮膚に炎症を引き起こす病気です。健康な状態の皮膚にもマラセチアが存在していることもありますが、免疫力の低下などがきっかけにより増えてしまい発症してしまいます。
皮膚だけでなく、耳の中で発症することもあり、赤みや痒み、脱毛、耳の中では耳垢が増えるなどの症状がみられるようになります。マラセチア症の外耳炎になった場合は、耳を強くかきむしるため耳血腫を引き起こしてしまうこともあります。
マラセチア症は動物病院で簡単に検査が可能です。マラセチアは真菌なので、マラセチア症の治療法は抗真菌薬を使って治療が行われます。症状により塗り薬や内服薬が処方され、しばらく症状をみながら通院するケースがほとんどです。
ノミアレルギー性皮膚炎
猫のノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミに対してアレルギーを持っているために、ノミに噛まれることで発症する病気です。ノミアレルギー性皮膚炎は強い痒みがみられるため、体をしきりに噛むようになります。そのため、脱毛や怪我をすることもあります。他にも、発疹や皮膚にノミの糞がみられることがあります。原因はノミが皮膚を噛む時に出る唾液ですが、発症するかどうかは体質次第です。
ノミアレルギー性皮膚炎の治療では、ノミの駆除やステロイド剤や抗生物質などの内服薬を症状によって処方されます。症状が収まってもノミに寄生されると、また発症してしまうため、ノミに寄生されないようにすることが大事です。
膿皮症
猫の膿皮症とは、皮膚に存在する菌が増殖することにより発症します。体調不良や皮膚の状態が悪くなることでみられるため、どの猫でも発症する可能性はあります。膿皮症は体が痒がる、発疹、脱毛、かさぶたなどがみられます。
膿皮症は、抗生物質や塗り薬、シャンプーなどの治療が行われます。内服を与えることが難しい場合では、一定期間効果が持続する薬を注射することも可能です。かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
皮膚糸状菌症
猫の皮膚糸状菌症とは、皮膚に糸状菌という真菌が感染したことにより発症します。皮膚糸状菌症は人にも感染する病気なので、注意が必要です。皮膚糸状菌症は円形の脱毛やフケで、痒みはあまりみられませんが、同時に細菌感染を引き起こしている場合は痒みがみられます。治療には、抗真菌薬や薬用シャンプーなどが処方されます。人にも感染する皮膚病なので、猫に触った後はしっかり手を洗い、生活環境もしっかり掃除するようにしましょう。同居動物がいる場合は隔離し、感染しないような工夫が必要です。
疥癬症
疥癬症とは、疥癬(ヒゼンダニ)という寄生虫が感染することにより引き起こされる病気です。激しい痒みや皮膚の炎症がみられ、疥癬症は他の犬猫に感染するため注意しましょう。疥癬症は激しい痒みから頭をふることやフケ、発疹などがみられます。治療法は抗疥癬症を使用します。しっかり治療を行う必要があるため、痒みがみられる時には早めに動物病院を受診しましょう。
心因性脱毛
心因性脱毛とはストレスにより脱毛が起こる病気です。猫に過剰にストレスがかかると、同じところを過剰になめ、噛むことがあります。噛むことにより脱毛だけでなく皮膚炎を引き起こす可能性があります。心因性脱毛は、精神的な要因が原因のため、その原因を突き止める必要があります。さらに、ストレス解消をするために、生活環境を改善することや一緒に遊びストレス発散する方法がおすすめです。
心因性脱毛はストレスが原因ですが、ストレスの原因となることが他の病気によるものである場合は、そちらの治療を先に行いましょう。
皮膚血管炎
猫の皮膚血管炎とは、皮膚に通っている血管に炎症が起こり引き起こされる病気です。何らかの原因により免疫に異常が起こります。脱毛、紫色の斑点、耳の縁の皮膚が部分的に落ちる、潰瘍などがみられるようになります。進行すると食欲不振や発熱、痛みがみられるようになるため、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
猫の皮膚病の原因
猫の皮膚病には何らかの原因により引き起こされます。病気によりその原因は少しずつ異なりますが、代表的な原因についてご紹介します。
不衛生な環境
猫の皮膚炎は不衛生な環境で生活することにより引き起こされることが多いです。脱毛やフケやホコリなどが多い環境で生活していると、皮膚を刺激してしまいます。不衛生な環境は、猫の皮膚のバリア機能を低下させます。皮膚のバリア機能とは、皮膚を正常な状態に保つために大事な機能です。このバリア機能が低下することにより皮膚病を引き起こす可能性があるため、生活環境をこまめに掃除し、清潔な環境で過ごすことができるようにしましょう。
ブラッシング不足
猫の皮膚炎は、ブラッシング不足により引き起こされることが多いです。ブラッシングを怠ると、体に脱毛やフケが付着し続けます。そのため、皮膚が炎症を引き起こしやすくなります。猫は自分で毛づくろいを行いますが、こまめにブラッシングを行ってあげましょう。
体調不良
猫の皮膚炎は、体調不良により引き起こされることがあります。猫が体調を崩すと、免疫力が低下し、皮膚炎を引き起こしやすくなります。まずは、原因を突き止めて、治療を行う必要があります。
4,猫の皮膚病の症状
猫の皮膚病の症状はどの病気も似ています。ここでは、猫皮膚病の代表的な症状についてご紹介します。
皮膚の痒み、赤み
猫の皮膚炎の代表的な症状の一つとして、皮膚の痒みや赤みなどがみられます。皮膚の痒みはほとんどの皮膚病でみられる症状なので、猫が頻繁に痒がっている場合、皮膚病が疑われます。ただ、病気でなくても、皮膚を痒がる場合もあるため、猫が体を痒がっている時には毛をかき分けて皮膚の状態を直接確かめることをおすすめします。
脱毛、フケ
猫の皮膚炎の代表的な症状の一つとして、脱毛やフケがみられます。健康な状態でも脱毛やフケがみられることもありますので、脱毛やフケの量や頻度、皮膚の状態などをみていきましょう。季節の変わり目などは健康でも脱毛がみられるので、皮膚炎かどうかわからず不安な場合は、動物病院に相談してみましょう。
痒みがみられないこともある
猫の皮膚炎には、痒みの症状がみられない場合もあります。しかし、皮膚の炎症や、脱毛などがみられる場合もあるので、症状を総合的にみて判断することが大切です。
猫の皮膚病の治療法とは?
猫の皮膚病を治療するための方法にはいくつかあります。ここでは、猫の皮膚病の治療法についてご紹介します。
塗り薬もしくは内服薬
皮膚病の治療法には、塗り薬や内服薬を使用する方法もあります。皮膚病の原因が細菌や真菌であればそれに合った薬を、炎症がひどい場合であれば抗炎症薬などが処方されます。塗り薬や内服薬かは、猫の性格や皮膚病の進行具合により変更されます。
薬用シャンプー
皮膚病の治療法には、薬用シャンプーを使用する方法もあります。薬用シャンプーにはいくつか種類があり、猫の皮膚病に合わせて選び処方されます。薬用シャンプーは自宅で使用することもできますが、使用方法が普通のシャンプーと異なるため注意が必要です。使用方法については、動物病院で説明を聞き、使用するようにしましょう。
自宅でのケア方法とは?
皮膚病は自宅でのケアがとても大切です。動物病院での治療と並行して、自宅でもしっかりケアすることが早期完治へとつながります。ここでは、自宅でできるケア方法についてご紹介します。
ブラッシング
ブラッシングは皮膚病を予防、早期発見するためにも大事なケアの一つです。ブラッシングをすることにより、ホコリや無駄な被毛を取り除き、皮膚を清潔に保つことができます。さらに、ブラッシングのブラシによっては皮膚のマッサージ効果も期待でき、皮膚の血流を促すことにもつながります。
ブラッシングを怠ると被毛が絡まり、皮膚が不衛生な状態になります。そのままでは、さらに皮膚炎を起こしやすくなってしまうため、短毛種であれば2,3日に1回程度、長毛種であれば1日に1度程度、ブラッシングを行うようにしましょう。
しかし、ブラッシングは無理やり行ってはいけません。猫の様子をみながら、無理のない範囲で行っていき、猫がブラッシングに慣れるようにしましょう。
定期的なベッドなどの掃除
清潔な皮膚を保つためには、定期的にベッドなど猫が頻繁に利用する場所を清潔な状態にすることが大事です。そのため、ベッドや布団をこまめに掃除し、ケージ内もホコリや汚れがないようにお手入れをしておきましょう。
まとめ
ここでは、猫の皮膚病の一覧や原因、治療法、自宅でのケアについてご紹介しました。猫の皮膚病の種類はたくさんあります。猫の皮膚は人より薄いだけでなく、全身被毛に覆われているため、皮膚病になりやすく、さらに、飼い主が見つけにくいという特徴があります。そのため、皮膚病を防ぐためには、日頃から猫の体を触り、ブラッシングなどのケアをしていくことが大事です。
皮膚病はすぐに命に関わる病気でないことが多いため、様子をみてしまいがちですが、猫がひっかくことにより炎症を起こします。そのため、猫が体を痒い仕草をした時には、皮膚の状態を確認し、必要に応じて動物病院を受診することをおすすめします。
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