猫は上下左右に動くことができるため、多少暑くても自分の意志で涼しい場所に移動できます。そのため、熱中症にはなりにくいように感じるかもしれませんが、暑さが厳しい時期や湿度が高い時期は、とても危険です。
ここでは、猫の熱中症について、原因、治療法、病院での対応をご紹介します。
この記事を書いた人
保有資格:小動物看護士/ペット販売士/トリマーB級/ハンドラーC級/訓練士補/二級愛玩動物飼育管理士/第一種動物取扱業登録/動物取扱責任者
JKC公認トリマー養成機関で2年犬や猫に関する様々な知識や技術を学び、多数の資格をとる。トリミングサロンStar seaを経営。
猫も熱中症になるの?
熱中症とは体温が上昇したままの状態になり、体の機能が正常に働かなくなることで、そのまま放置してしまうと神経や循環器障害がみられ、最悪の場合死に至ります。熱中症は発見してからできるだけ早く体温を下げ、動物病院を受診することが大事です。
熱中症にならないように気温や湿度が上昇しやすい季節はこまめに室温を確かめ、水分補給がしっかり取れる状態かどうか見極めることも必要です。
しかし、熱中症は室内を快適な環境にしていても起こることがあります。猫が快適な部屋から外へ出てしまい、その部屋に入ることができなくなってしまったケースや、押し入れなどの部屋に入り込んで気が付かずにドアを閉めてしまったケースなどです。そのため、定期的に猫がどこにいるかも確認することをおすすめします。
熱中症は室外や室内だけでなく、車内でも起こりうる病気です。車内で猫一人取り残すことは絶対にしてはいけません。猫を連れていけない場所に出かける場合は、快適に過ごせる環境を整えてからお出かけするようにしましょう。
原因について
熱中症は温度、湿度、直射日光などの暑さが原因で引き起こされます。猫は口呼吸(パンティング)や肉球から汗をかき体温を調節します。しかし、人と比べて汗腺が少ないため、急激な体温上昇には対応できません。そのため、室温だけでなく、猫自身の体温上昇には気をつけなければいけません。
近年では、春や秋でも暑さが厳しいため、まだ夏ではないからと油断しないようにしましょう。
症状は?
熱中症は軽い症状から、進行すると重い症状がみられるようになります。発見が遅れば遅いほど、治療に時間がかかり、命を脅かす危険性も高くなります。猫の異変にできるだけ早く気づくことが大事となります。
ここでは、猫の熱中症の症状についてご紹介します。
元気消失
熱中症になると元気がなくなり、症状が進行するとそのままぐったりしてしまいます。元気がなくなるとともに食欲もなくなるため、なにかおかしいと感じた時には猫の体に触れ体温を確認しましょう。
自宅で猫の体温を測ることができるのであれば測定することが一番ですが、自宅での測定が難しい場合は体に直接触ることがおすすめです。猫は全身被毛で覆われているので、被毛量の少ない耳に触れてみましょう。しかし、触り慣れていないと体温の上昇を察知することも難しいため、猫の状態がいつもと異なる場合は動物病院を受診しましょう。
口呼吸になる
熱中症になると、口呼吸をするようになります。猫は基本的に口呼吸をしませんが、体温の上昇を抑えるために口で呼吸し、体温を調節しようとします。猫はめったに口呼吸をすることがないため、口呼吸をしている時は、体温が上昇しているというサインの一つです。直前に激しい運動をしていたわけでもないのに口呼吸をしている場合は熱中症の危険だけでなく、何らかの病気が隠れている可能性もあります。
体温上昇
熱中症になると、体温が上昇します。猫の体温は直腸で測定し、平均38度程度です。もともと平均体温が高めな猫もいますが、熱中症となると体温は40度を超えてしまいます。
体温が上昇したままになると体の臓器や機能も鈍くなり、障害を起こします。
体の機能が低下する前に体温を平均値まで下げなければいけません。猫の体がいつもより高く、ぐったりしているようであれば、自宅で応急処置を行いつつ、動物病院に連絡し、すぐに受診するようにしましょう。
下痢や嘔吐
熱中症が進行すると、下痢や嘔吐などがみられることがあります。体温が上昇し、脳や神経に異常をきたすため、下痢や嘔吐を引き起こします。下痢や嘔吐は続いてしまうと、脱水を引き起こす可能性があるため、さらに注意が必要になります。
歩行障害
熱中症が進行すると、歩行障害もみられるようになります。体の体温が上昇し、歩くこともままならなくなります。熱中症がかなり進行している時にみられる症状なので、早急に動物病院を受診しましょう。
意識混濁
熱中症がさらに進行すると、意識が混濁した状態になります。呼びかけても反応がなく、痙攣を起こすこともあります。ここまで状態が進行してしまうと、一命をとりとめても後遺症をもたらす可能性もあり、大変危険な状態です。すぐに処置を行っても、助からないこともあります。
循環不全や臓器障害
熱中症がさらに進行すると、循環不全や臓器障害がみられるようになります。体温の上昇により、体の臓器にも負担をかけるため、一命をとりとめても臓器障害などが残る可能性もあります。呼吸をすることもできなくなるケースもあり、そのまま命を落とす可能性も高くなります。すぐに治療が必要な状態です。
治療法とは?
熱中症になった時にはどんな治療を行うのでしょうか。ここでは動物病院での治療法についてご紹介します。
体温を下げる
熱中症になってしまった時は、まず体温を下げていきます。首や脇や太ももなどの大きな血管が走っている部位にタオルを巻いた保冷剤などを当てていきます。スプレーに水を入れて吹きかけることもあります。さらに、体内から体温を下げるために、輸液や点滴も行います。
検査
体温を下げながら、今の猫の状態について調べていきます。身体検査、血液検査、レントゲンや超音波検査などを行っていきます。熱中症により体のどの臓器に負担がかかっているかなども調べていきます。
症状への治療を行っていく
体温を下げながら、出ている症状を改善するための治療を行っていきます。酸素がしっかり循環できていない状態であれば酸素吸入を、他にも薬を注射で投与することもあります。猫の状態により行う処置は変わっていきます。
自宅でできる応急処置とは?
熱中症はできるだけ早く体温を下げることが大事です。そのため、自宅で熱中症になってしまった時には、体温を下げる処置を行いましょう。
ここでは、自宅でできる応急処置についてご紹介します。
保冷剤で体を冷やす
自宅でできる応急処置として、タオルを巻いた保冷剤を猫に当てる方法もおすすめです。猫の体温を下げるために一番効果的なのがこの方法です。首、脇、太ももには太い血管が走っているので、この部位を冷やすことにより体温を下げることができます。他にも、スプレーに水を入れて全身吹きかける方法もあります。
熱中症になると慌ててしまうかもしれませんが、保冷剤は必ずタオルにくるみ使用しましょう。そのまま使用することで凍傷になってしまう可能性があるため、注意が必要です。
水で濡らしたタオルを当てる
自宅でできる応急処置として、水で濡らしたタオルを当てる方法もおすすめです。猫の体温を下げるためには、水で濡らしたタオルを体に当てることです。保冷剤で冷やしながらタオルをかけることでより体温を下げることができます。保冷剤を嫌がる場合にもおすすめです
室温を下げる
自宅でできる応急処置として、室温を下げることもおすすめです。猫の体温を下げるために熱中症を疑った時には室温を下げましょう。猫に直接冷気が当たらないように気をつけつつ、体温を効率良く下げることができる環境を作り
水分補給をさせる
自宅でできる応急処置として、水分補給もおすすめです。意識がない状態では誤嚥を引き起こす可能性があるため、しないほうがいいですが、軽度の熱中症であれば水分を与えることにより体温を下げるための手助けになります。自分で飲むことができないのであれば、スポイトを利用して少しずつ与える方法や清潔なガーゼに水を含ませて与える方法があります。
冷やし過ぎには注意
体温を下げなければいけないと言っても、下げすぎてしまうのは危険です。こまめに体温を測定し、平均体温近くなった段階で冷やすのはやめましょう。
まとめ
ここでは、猫の熱中症について、原因、治療法、病院での対応をご紹介しました。
毎年夏場になると、熱中症のニュースを見ることが多くなりますが、気をつけなければいけないのは、人だけではありません。猫は自由に動き回ることができるからといっても、密室空間にいると熱中症になる可能性があります。
室温や湿度、日差しなどには気をつけ、快適な環境を整えてあげましょう。夏場は天気が急に悪くなり雷などにより停電することもあるため、悪天候時には早めに帰宅することもおすすめします。
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