最近話題になってきている「犬に生肉を与える食事法」。
インスタやTikTokでも、実際に生肉を与えている様子を見かけることが増えてきたのではないでしょうか。
「犬に生肉を与えること」については、昔からペットフード業界でも議論が続いているテーマです。
そこで今回は、2025年の今、生肉は犬にとって安全なのか?
そして、実際に生肉を与えることで考えられるメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。

Dog salon Star seaの専属ライターです!10歳になるチワックスと仲良く暮らしています。取得した知識を活かしワンちゃんに関する記事を執筆していきます!
保有資格:犬の管理栄養士、犬の管理栄養士アドバンス、犬の管理栄養士マスター

【結論】人間用の生食用の生肉であれば犬に与えても大丈夫!だがリスクはある

生肉は食中毒のリスクがあるため、「人間用 生食用の肉」を使うのが安心です。
人間用 生食用として販売されている肉は、加熱せずに食べても問題ないように一定の衛生基準で加工・管理されています。
とはいえ、生食用の肉でも、サルモネラ菌やO157、カンピロバクターといった細菌のリスクを完全にゼロにすることはできません。
実際、これらの菌は健康な動物の腸内にも存在することがあり、生肉を加熱せずに与えれば犬でも食中毒を起こす可能性はあるのです。
また、生肉を中心にした食事を続ける場合は、犬の栄養バランスに関する知識が必要です。
独学で与え続けてしまうと、ビタミン不足や栄養素の不足など、栄養の偏りによる健康リスクも出てきます。
そのため、毎日のように与えるのではなく、時々のトッピングやご褒美として与えるのが無難で安心と言えるでしょう。
- 人間用の「生食用」と明記された肉を使用する(ペット用はリスクが高まる)
- 毎日は与えず、時々トッピングとして使う程度にとどめる
- 保存・取り扱いには十分注意し、食器や手指も清潔に保つ
- 体調の変化(下痢・嘔吐など)がないか必ず観察する
【ネットやSNSの情報の鵜呑み注意‼】犬は食中毒になる可能性は十分にある!
近頃、インスタやTikTokなどで、愛犬に生肉を与えている方が
「犬は強酸性の胃酸を持っているから菌も殺せる!」
「犬の祖先のオオカミは腐った肉を食べていたから大丈夫!」
といった投稿をしているのを、私自身も目にしたことがあります。
ですが、これらの話には明確な根拠があるとは言いづらく、正直ちょっと危ういなとさえ感じました。
実際に犬が生肉で食中毒を起こして動物病院に運ばれたケースもありますし、
多くの動物病院の公式サイトでも「食中毒の疑いがある場合は速やかに受診を」と注意喚起されています。
また、「犬の祖先はオオカミだから大丈夫」と言われることもありますが、オオカミが家畜化されたのは約1万5千年前の話。
そこから長い時間をかけて犬の食生活も大きく変わり、消化しやすい食べ物も人間と同じく進化してきました。
たしかに犬は人間よりも胃酸が強いとは言われていますが、食中毒菌を完全に殺せるという根拠はどこにもありません。
生肉を推奨する人の中には、メリットだけを強調してリスクには触れないケースもあるので、情報をうのみにせず、慎重に判断することが大切です。

ちなみに、実験で犬にO157を与えたところ、胃酸で殺菌されずにそのまま腸まで通過したという結果が出ています。
実際に、犬の糞便からO157に感染し、人間に健康被害が出たケースも報告※されています。
このように、犬だけでなく飼い主にもリスクが及ぶ可能性があることを忘れてはいけません。
※参照文献:ペットにおける畜肉の生食の危険性について
犬に生肉を与えるメリット|健康志向の飼い主が注目する理由

- お肉に含まれる栄養をそのまま摂取できる
- 香りや食感がよく、食いつきがいい
- 単一タンパク源であれば、アレルギー予防になる
- 良質なタンパク質を摂取することで、毛艶や毛並みの状態が良くなることもある
犬に生肉を与える最大のメリットは、栄養が豊富なことです。
一般的なペットフードに使われている肉は、少なからず加熱処理がされていますが、生肉は加熱されていないため、加熱で失われがちな酵素やビタミンなどの栄養素をそのまま摂取できます。
また、トッピングを野菜や果物だけにすれば、タンパク源を単一に保つことができるため、重度のアレルギーを持つ犬のアレルギー対策として活用できるケースもあります。
さらに、実際に愛犬に生肉を与えた飼い主さんから毛艶や毛並みが良くなったという話もありますが、これは個体差が大きいため大きなメリットとは言いにくいでしょう。

SNSなどで見かける「生肉推奨」の情報は、科学的な根拠よりも個人の体験談に基づいた内容が多く、正確性に欠ける場合もあります。
犬に生肉を与えるデメリット|犬の生食に潜む危険

- 食中毒のリスクは少しでもある
- 犬を媒体し、飼い主への食中毒の感染もある
- 慣れていないせいで下痢してしまう子も多い
- 栄養バランスが偏りやすい
- 飼い主さんに手間がかかる&それなりの知識も必要
- コストがかかる
一方で、生肉の大きなデメリットは「食中毒のリスク」と「栄養バランスの偏りやすさ」です。
食中毒については冒頭でも触れましたが、注意すべきは犬だけではありません。
犬を介して、飼い主さんに食中毒菌がうつってしまうリスクもあるのです。
特に、小さな子どもや高齢者がいる家庭では重症化しやすくなるため、十分な注意が必要です。
また、栄養バランスが崩れやすいことも無視できません。
犬は長い年月の中で家畜化され、完全な肉食動物ではなく雑食になってきており、必要な栄養素も多様化しています。
つまり、生肉だけでは必要な栄養をすべてまかなうことはできないのです。
それを補うためには、専門的な栄養学の知識が必要になります。
時々トッピングとして与える程度であれば問題ありませんが、頻繁に与えると栄養の過剰摂取や不足が起こり、かえって健康を損ねるリスクもあります。
また、生肉はコストが高くつきやすいため、経済的な負担が大きくなりやすい点もデメリットになるでしょう。
犬に安全な生肉の種類は?与えていいお肉・避けるべきお肉を解説

結論から言うと、国内において生で比較的安全に与えられるのは「牛肉(内臓を除く)」と「馬肉・馬レバー」だけです。
これらの肉は人間用の“生食用”として法律で「規格基準」が定められており、衛生管理が徹底されているため、安全性が比較的高いとされています。
一方で、鶏肉は生で与えるのはとてもリスクが高いです。
実際に行われた調査では、サルモネラ菌の陽性率が牛で1.5%に対し、鶏では51.9%と半数以上から菌が検出※されました。
このことからも、鶏肉を生のまま与えるのはほぼ“危険しかない”選択肢と言えます。
また、ペット用として通販などで販売されている生肉も注意が必要です。
ペットフードは「食品」ではなく「雑貨」扱いのため、人間用のような厳密な衛生基準が定められていないのが現状です。
そのため、ペット用は生食用の人間向けの肉に比べてリスクが高いと考えておくべきでしょう。
こんな犬には生肉はダメ!体質・年齢別にわかりやすく紹介

生肉が犬の健康に良いという意見もありますが、医学的にしっかりと証明されているわけではありません。
また、生肉はすべての犬に合うわけではなく、与えても問題ない犬と、与えるべきではない犬がいるのも事実です。
ここでは、どのような犬に生肉が適していないのかをわかりやすく解説していきます。
子犬
胃腸がまだ未発達な子犬に生肉を与えるのは控えたほうがいいでしょう。
実際に、毎日のように生肉を与え続けたことで「くる病」になってしまった子犬の例も※あります。
くる病とは、骨や軟骨の成長に異常が起きたり、関節が腫れたりする病気で、カルシウムなどの栄養不足によって引き起こされます。
大切な成長期には、必要な栄養がきちんと摂れる“子犬用または全年齢対応の総合栄養食のドッグフード”を与えるのが基本です。
健康な体をつくるためにも、バランスの取れた食事を心がけましょう。
※参照:東洋経済「生肉を「よかれと思って」子犬に与えた主人の後悔」
シニア犬
シニア犬になると、消化機能が衰えたり、免疫力が低下してきたりします。
そのため、生肉に慣れていないシニア犬に与えると、下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。
さらに、下痢や嘔吐が続くと、シニア犬はすぐに体力を奪われて衰弱してしまう可能性があるため、注意が必要です。
免疫が低下している犬
免疫が低下して病気への抵抗力が弱くなると、生肉によって重い食中毒を起こすリスクも高まります。
たとえ生食用として販売されているお肉であっても、食中毒の可能性が完全にゼロになるわけではありません。
そのため、免疫が落ちている犬には、生肉を与えないようにするのが安全です。
過去に生肉で下痢や嘔吐を引き起こしたことがある犬
生肉を与えると、細菌や寄生虫の影響で下痢や嘔吐を引き起こすことがありますが、消化不良が原因になるケースもあります。
犬が生肉を食べていたのはずっと昔の話で、長い年月をかけて飼い犬として進化してきた今では、加熱された肉のほうが消化しやすい傾向にあります。
また中には、「下痢や嘔吐をしても、与え続ければ慣れる」といった根拠のない意見を言う人もいますが、人間だって下痢や嘔吐が続けばつらいものです。
それを、愛犬がつらいと感じているのに無理に与え続けるのは、さすがにかわいそうですよね。
もし、生肉を与えて下痢や嘔吐が出てしまった場合は、その子の体質に合っていない証拠です。
そういったときは、無理せず消化しやすく栄養バランスの取れたドッグフードに切り替えてあげましょう。
犬に与える生肉に関するQ&A

- 犬が間違えて生肉を食べてしまった時の対処法は?
-
犬が生肉を食べてしまった場合、細菌や寄生虫による食中毒で下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
まずは落ち着いて、かかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。食中毒の原因となる細菌の中には、食べてから6時間ほどで症状が出るものもあれば、数日後に現れるものもあります。
そのため、1日経って異常がなかったとしても油断せず、しばらくのあいだは愛犬の体調に注意して観察しましょう。もし下痢や嘔吐などの症状が出た場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。
- 犬に生肉を推奨している人がいるのはなんで?
-
「自然志向」や「本来の食事に近づければ健康になる」という考えから、生肉を推奨する声がSNSなどで多く見られるようになっています。
こうした発信は、「この考えをもっと広めたい」「理解してほしい」という気持ちから生まれているのでしょう。ただし、「自然=安全」と思い込んでしまうことで、リスクに気づいていない人も多いのが現実です。
中には、科学的な根拠や衛生面のリスクを無視したまま広まっている情報もあるので注意が必要です。生肉を愛犬に与えたいと考えるなら、まずはSNSの情報を鵜呑みにせず、専門家やかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
まとめ

最近では「愛犬に安全で良質なものを食べさせたい」という思いから、生肉を与える飼い主さんも増えてきています。
たしかに生肉は栄養価が高く、うまく合えば毛艶が良くなる、食いつきが良くなるなどの嬉しい効果が出ることもあります。
しかし一方で、生肉を与えたことによって犬が食中毒を起こしたり、菌を媒介して飼い主が感染したケースも実際に報告されています。
中には、生肉中心の食事で栄養が偏り、子犬が「くる病」になってしまった事例もあります。
生肉はメリットもあるかもしれませんが、それ以上にリスクが大きいのが現実です。
とくに栄養学の知識がないまま続けてしまうと、かえって健康を害してしまうことになりかねません。
愛犬に生肉を与える場合は、必ず「人間用の生食用」として販売されているものを選びましょう。
そして、食中毒などのリスクがあることも理解したうえで、慎重に与えることが大切です。
コメント