トイプードルは、くるくるとした毛が特徴的で可愛らしく社交的な犬種です。
また、毛も抜けにくく、賢く、明るい性格から比較的飼いやすい犬種でもあります。
お家でトイプードルを飼っている飼い主さんは、愛犬に健康で長生きして欲しいと思っている方がほとんどでしょう。
本記事では、トイプードルの寿命や健康で長生きするためのポイントを解説しています。
「トイプードルの寿命はどれくらいなの?」
「長生きするために飼い主ができることはある?」
と疑問をお持ちの方には、ぜひ参考にしてみてください。
宮崎大学農学部獣医学科卒業後、関西の動物病院に勤務。
大学では、循環器内科を専攻し、現在も循環器を得意分野として診察を行う。
獣医師として、飼い主さんの悩みに寄り添い、信頼できる正確な情報を多くの人にお届けできたらと思い情報発信を行なってます。保有資格:獣医師国家資格
トイプードルの平均寿命は15.3歳|長生きな犬種
トイプードルの平均寿命は、15.3歳と言われています。*(1)
人間に換算すると大体75歳~80歳程度になります。
犬全体の平均寿命が14.1歳*(1)ということを考えると、比較的長生きをする犬種であることがわかります。
しかし、この数字はあくまで平均なので、常に飼育環境を見直してあげることが大切です。
愛犬が長生きするためにできることは、ご飯を変更したり、ストレスを解消させてあげたりとたくさんあります。
次章では、トイプードルが健康で長生きするために大切なポイントを解説しています。
飼い主さんは、できることから実践してあげるようにしましょう。
トイプードルの健康寿命をのばすために大切な5つのポイント
飼い主さんが、愛犬のトイプードルの健康寿命をのばすためにできることはたくさんあります。
トイプードルならではのポイントもありますので、飼い主さんは参考にしてみてください。
- ストレスを解消してあげる
- 室内温度など飼育環境を見直す
- デンタルケアを行う
- 健康によく、愛犬に合った食事を与える
- 定期的に動物病院で診察を受ける
それぞれについて解説していきます。
ストレスを解消してあげる
ストレスは、人間を含め様々な生き物の寿命を縮めます。犬も長生きするためには、ストレスを取り除いてあげることが大切です。
トイプードルは、活発な子が多くが運動することも大好きです。
なかなか散歩に連れて行けていないとストレスが溜まってしまいますので、定期的に散歩に連れて行くといった運動習慣をつけましょう。
散歩に行く時間としては、健康な子で15~30分程度が目安となります。
足腰が弱く、長時間の散歩ができない子でも短い時間でもいいので外の空気に触れさせるようにしましょう。
抱っこで散歩する、手押し車に乗せて散歩するといったこともストレス解消に良いでしょう。
散歩以外にお家の中でも、スキンシップを取れる時間や遊んであげる時間をとってあげるとさらに良いです。
こうしたストレス解消は、愛犬の心と体の健康を保つ上で非常に重要ですので飼い主さんは普段の生活を見直してみてください。
室内温度など飼育環境を見直す
飼育環境の見直しも飼い主さんにぜひ行って欲しいことです。
トイプードルは、モコモコして暖かそうですが、シングルコートの犬種と呼ばれ被毛が一層構造のため寒さに弱い傾向があります。
そのため、室内の温度設定には注意が必要です。
エアコンの設定温度は、夏は26度程度、冬は20~22度程度に設定してあげて寒すぎない環境を作ってあげましょう。
服を着せてあげて、暖かくしてあげることも効果的でしょう。
また、冬場の乾燥も風邪をひく原因となりますので、加湿器をつけて50~60%の湿度を保つようにしてあげてください。
トイプードルは、小型犬であり骨が細いこともあり骨折しやすい犬種です。
また、膝のお皿が外れてしまう膝蓋骨脱臼や首や腰のヘルニアになることも多いです。
こうした病気を予防するためには、飼い主さんは飼育環境で以下の点を見直してみてください。
・フローリングで滑らないようにマットやカーペットをひく
・ソファやベッドにジャンプせずに乗れるように犬用ステップやスロープを設置する
・高いところから落ちて骨折しないように飼育環境に高いものを置かない
足腰が弱ると一気に体力が落ちることがあるので、愛犬にいつまでも元気でいて欲しいと思っている方は、こうした手足の骨や関節、神経疾患に注意してあげましょう。
デンタルケアを行う
犬の歯周病は、肝臓病や心臓病などの原因となります。
特にトイプードルは、口が小さいため歯と歯の間に食べカスが溜まり歯周病や歯肉炎などを起こすことが多いです。
飼い主さんは、歯周病や歯肉炎を予防するために、毎日歯磨きや歯磨きシートを用いてデンタルケアをしてあげましょう。
また歯周病予防のためのフードなどもありますので、試してみると良いでしょう。
しかし、一度形成された歯石は歯磨きなどのお家でできるデンタルケアではなかなか取り除くことは難しいです。
すでに歯石が形成されている場合は、一度麻酔をかけてスケーリングと呼ばれる歯石とりの処置をしてあげることをおすすめします。
スケーリングの処置後は、歯石がつかないようにしっかりとお家でデンタルケアをしてあげましょう。
健康に良く、愛犬に合った食事を与える
愛犬が健康で長生きするためには食事内容も考えなければいけません。
特にトイプードルは、高齢になってくると膵炎などの病気にかかりやすくなってきます。
また、腸内環境を整えることも長生きをするためにはとても大切です。
トイプードルに与えるべき食事は以下のようなものが考えられます。
- 低脂肪でお腹に優しい食事
- 肉や魚などの良質なタンパク質を含んでいる食事
- 水分補給もできる食事
脂肪分が多い食事は、お腹に負担をかけて腸内環境を乱してしまいます。また、膵炎になりやすくなることもあるので注意が必要です。
牛肉やチーズなどは愛犬が美味しそうに食べてくれることが多いですが、こうした食品は脂肪分を多く含んでいますので、健康に気をつけてあげるなら控えてあげた方が良いでしょう。
なるべく低脂肪の食事を心がけてください。
また、肉、魚などの良質なタンパク質でできたドッグフードを与えるようにしましょう。
犬も高齢化していくとどんどん筋肉が衰えていきます。こうした筋肉の衰えを防ぐためには、しっかりとタンパク質を摂取することが大切です。
また、犬は高齢化するに従って脱水することもありますので、普段の食事から水分を摂取できるようにしましょう。
ドライフードをふやかして与えてみたり、ウェットフードを与えてみることも試してあげてください。おやつに水分量が多い果物を与えることもおすすめです。
しかし、おやつも与えすぎると肥満傾向になり糖尿病や様々な病気のリスクになりますので、体重管理もしながら与えてあげてください。
定期的に動物病院で診察を受ける
定期的に動物病院で診察を受けることは、非常に大切です。
獣医師から普段の生活で気をつけるべきポイントや食事内容、体重管理などについて適切なアドバイスをもらうことができるので、飼い主さんは定期的に動物病院を受診するようにしましょう。
また、病気を早期発見・早期治療することもできます。
さらに、獣医師がいつも接している飼い主さんからでは、わからないような異変に気づいてくれることもあります。
どんなに健康な子でも半年に一回は動物病院を受診して触診や検査をしてもらうようにしておきましょう。
トイプードルがかかりやすい病気とお家でできる対策
トイプードルには、かかりやすい病気が存在します。
ここからは、トイプードルによくみられる病気についてそれぞれの症状と対策を合わせて解説していきます。
皮膚疾患
トイプードルは、皮膚疾患が多い犬種です。
皮膚疾患としては、以下のものが代表的に考えられます。
- 細菌性皮膚炎
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギーによるアレルギー性皮膚炎
モコモコ、クルクルとした毛は、汚れが排出されづらく細菌が増殖しやすい環境を作り出してしまいます。
症状としては、皮膚の赤みや痒みがみられることが多いです。
また、外耳炎も併発することが多いので、飼い主さんは定期的にチェックしてみましょう。
飼い主さんができる予防法としては、以下のようなものが考えられます。
- シャンプーやトリミングをこまめに行う
- 定期的にブラッシングを行う
- 食物アレルギーが疑われるドッグフードなどは与えない
もし、皮膚炎を起こしてしまった場合は、早めに動物病院を受診して検査してみることをおすすめします。
歯周病、歯肉炎
トイプードルは口が小さく、歯と歯の間も狭いため歯周病や歯肉炎になりやすい犬種です。
歯周病や歯肉炎になっている子は、口臭もひどいことが多いのでチェックしてみてください。
また歯石が硬くこびりついている場合は、スケーリングの処置をしてあげることをおすすめします。
飼い主さんができる予防法としては、毎日のデンタルケアが大切です。
食後には、歯磨きや歯磨きシートを用いて食べカスを除去するようにしましょう。
膝蓋骨脱臼、前十字靭帯断裂、大腿骨頭壊死などの整形疾患
整形疾患もトイプードルに多い病気です。
特に多いのは、以下の3つです。
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靭帯断裂
- 大腿骨頭壊死
これらの疾患では、歩き方の異常が認められることが多いです。
足を上げたまま歩いていたり、びっこをひく時には、整形疾患を考えましょう。
前十字靭帯断裂や大腿骨頭壊死は、オペをしないと治ることはない病気ですので、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
飼い主さんができること予防法としては、激しい運動を避けることです。
散歩に連れて行くのは大事ですが、猛スピードで走って急にストップしたり、急な方向転換によって膝蓋骨脱臼や前十字靭帯断裂は起こります。
飼い主さんは、無理な運動はさせないように十分に注意しましょう。
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、犬で最も多い心臓病です。
心臓の弁がうまく閉まらず、一時的に血液が逆流してしまいます。
放っておくと、肺に水がたまり命を落とす可能性がある肺水腫になることがあります。
犬が僧帽弁閉鎖不全症になったときに考えられる症状は以下の通りです。
- 呼吸が荒い
- 咳をする
- 運動したがらない
こうした症状が認められた場合は、動物病院を受診するようにしましょう。
心臓病の場合、飼い主さんができる予防法というものはありません。
定期的に動物病院を受診して聴診してもらい、病気の早期発見・早期治療を行うようにしましょう。
腎不全
トイプードルは、高齢になってくると腎不全になることがあります。
腎不全の症状としては、以下のようなものが考えられます。
- 嘔吐
- 食欲不振
- 体重減少
- 多飲多尿
飼い主さんは、こうした症状がないかどうかチェックしてみてください。
特に多飲多尿は腎不全でよく認めらえる症状です。最近よくお水を飲むといった場合には、腎不全かもしれないので、注意が必要です。
腎臓病の場合も、飼い主さんができる予防法というものはあまりありません。
腎臓病は早期発見・早期治療がとても大切です。
上記の症状が認められましたらい、早めに動物病院を受診するようにしてください。
膵炎
膵炎も高齢になってくると多くなる病気です。
膵炎の症状としては、以下のようなものが考えられます。
- 嘔吐
- 食欲不振
- 発熱
- お腹を痛がる
膵炎は重症化すると命に関わる病気です。こういった症状が見られた場合はすぐに動物病院についれて行くようにしてくだいさい。
飼い主さんができる予防法としては、低脂肪の食事を与えることが大切です。
牛肉やチーズといった脂肪分の多い食事は膵炎を引き起こすので与えないようにしましょう。
トイプードルの多い死因トップ3
トイプードルに多い死因は以下の通りです。*(2)
- 泌尿器系の疾患・・腎不全など
- 循環器系の疾患・・僧帽弁閉鎖不全症など
- 肝臓・胆嚢・膵臓系の疾患・・膵炎、胆嚢粘液嚢腫、肝不全など
一番多い死因は、腎不全などの泌尿器系の疾患です。
その後に僧帽弁閉鎖不全症などの循環器系の疾患、膵炎などの肝臓・胆嚢・膵臓系の疾患と続いていきます。
なかなか健康寿命をまっとうすることは難しく、何らかの疾患によって亡くなってしまうことが多いです。
飼い主さんは、愛犬がシニア期に入ってくると定期的に動物病院を受診して、病気になっていないかどうか常日頃からチェックしてあげるようにしてください。
トイプードルの寿命に関するよくある質問
ここからは、トイプードルの寿命についてよくある質問についてお答えします。
飼い主さんが疑問に思っていることにも答えていきますので、ぜひ参考にしてください。
- トイプードルは、避妊や去勢手術をすることで寿命は伸びる?
-
避妊や去勢手術が寿命に影響するといった報告はありません。
そのため、避妊や去勢手術をしたくない飼い主さんはしなくても寿命には影響しないでしょう。
しかし、実際の臨床現場で働いていると子宮蓄膿症など避妊、去勢をしていると防げた病気に遭遇することが多々あります。
病気を予防するといった観点から言えば、避妊去勢手術を行ってあげたほうがよいと考えます。
- トイプードルの体格や毛色は、寿命に影響するの?
-
体格や毛色が寿命に影響するといった報告はありません。
タイニープードルやティーカッププードルなどの体格が小さい子も通常のトイプードルと寿命は変わりません。
また、毛色が寿命に影響するといった報告もありませんが、ブルーの毛色のトイプードルは、「マール遺伝子」と呼ばれる、目と耳の疾患を発症する遺伝子を持っている可能性があります。*(3)
しかし、「マール遺伝子」の有無が寿命に影響を与えるといった科学的報告はされていません。
- トイプードルの老化やシニア期はいつからはじまるの?
-
およそ6歳〜7歳ぐらいから徐々に老化やシニア期のサインが見られるようになります。
犬の6歳や7歳は、人間で言うと40〜50歳にあたります。
この辺りの年齢から、徐々に老化のサインがあらわれてきます。
- 毛艶が悪くなる
- 食事の量が減ってくる
- 歩く速度が遅くなる
こういったサインが見られましたら、愛犬もそろそろシニア期に入ってきたかなと思っておいてください。
食事を低脂肪かつシニア用のフードに変えたり、散歩の時間を調節しストレスケアを行うようにしてあげてください。
まとめ
トイプードルの寿命は15.3歳と犬の中では長生きな犬種です。
しかし、長生きする分、さまざまな病気にかかりやすいです。
本記事で解説したように、愛犬の健康寿命を伸ばすためにできることは、たくさんあるのでおさらいしておきましょう。
- ストレスを解消してあげる
- 室内温度など飼育環境を見直す
- デンタルケアを行う
- 健康によく、愛犬に合った食事を与える
- 定期的に動物病院で診察を受ける
飼い主さんは、常日頃からこれらのポイントを意識して愛犬の健康寿命を伸ばしていきましょう。
*参考文献
(1)アニコム「家庭どうぶつ白書2021」
(2)動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析
(3)小動物の遺伝性疾患に関する考察
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