飼い主さんは愛犬の目やにが増えてきたり、目やにの状態がいつもと違ったりした場合、病気にかかっていないかどうか心配ですよね。
本記事では、犬の目やにの原因や対処法と目やにの取り方を獣医師が解説しています。
動物病院に連れて行くべき目やにと考えられる病気、目やにの正しい取り方など犬の目やにについて理解を深めることができますので、飼い主さんはぜひ参考にしてみてください。
宮崎大学農学部獣医学科卒業後、関西の動物病院に勤務。
大学では、循環器内科を専攻し、現在も循環器を得意分野として診察を行う。
獣医師として、飼い主さんの悩みに寄り添い、信頼できる正確な情報を多くの人にお届けできたらと思い情報発信を行なってます。保有資格:獣医師国家資格
犬の目やにの主な原因とは
犬の目やにの原因は大きく以下の2つが考えられます。
- 眼球内の古い細胞や老廃物、ほこりなどが涙と一緒に流れ出た生理現象によるもの
- 目の病気や刺激による炎症産物が排出され固まる眼球内の炎症によるもの
生理現象による目やには、犬が生きている上で少なからず排出されますので、健康な子でも見られます。
しかし、眼球内の炎症による目やにでは、目の病気や緊急性がある場合もあるので注意が必要です。
それぞれについて詳しく解説していきます。
生理現象による目やに
生理現象による目やにでは、目の中の古い細胞や老廃物を排出する役割を持っています。
健康な子でも見られる目やにであり、特に動物病院を受診する必要はありません。
生理現象による目やには以下のような特徴があります。
- 黒色、茶色、白色の目やに(1日に1~2回拭く程度の量)
- カラカラに乾いている or ゼリー状
犬も人間と同じように寝起きには、目やにが排出されることが多いです。
飼い主さんは、寝起きの目やにが上記の生理現象による目やにの特徴に当てはまっているかどうかチェックしてみましょう。
眼球内の炎症による目やに
眼球内の炎症による目やには、愛犬が目の病気にかかっている場合や目の中に何らかの異物が入りこんでいる時によく見られます。
眼球内の炎症による目やには以下のような特徴がありますのでチェックしてみましょう。
- 緑色、黄色
- ドロドロ、ネバネバで粘稠度が高い
- 1日に3回以上目やにが出る
- ニオイが臭い
こうした目やにが出ている場合は、目の病気にかかっている可能性がありますので、一度動物病院で検査してもらうことをおすすめします。
また眼球内の炎症があるかどうか確かめるには、目の白い部分(白目)に注目しましょう。
白目の部分が赤く充血している場合は、炎症が起こっているサインです。
よくある目の病気を以下にまとめてますので参考にしてみてください。
飼い主さんは、上記の目やにの特徴や白目の部分の充血を認めましたら、目の病気を疑い動物病院を受診するようにしましょう。
次章では、他にも動物病院で診てもらわないといけない目の状態を解説していますのでぜひ参考ください。
動物病院で診てもらわないといけない目の状態は?
ここまで、眼球内の炎症による目やには、動物病院を受診するべきであると解説してきました。
しかし、目やに以外にも眼球の状態、瞼の開け方などによっても動物病院を受診した方が良い場合があります。
動物病院を受診すべき状態とそれぞれの状態で疑われる病気は、以下の通りです。
- 白目の部分が充血している
・・結膜炎、ぶどう膜炎、緑内障、ドライアイ - 目を開けづらそうにしている
・・角膜炎、緑内障 - 目を痒がる、目の周りが腫れる
・・食物アレルギー、花粉症 - 眼球内が赤くor白く濁る
・・白内障、核硬化症、眼球内出血 - 眼球が大きくなる
・・緑内障 - 瞳孔(黒目の部分)が開きっぱなしになる
・・失明、高血圧、網膜剥離、視神経炎 - 眼球内に黒色や白色などのできものがある
・・角膜ジストロフィー、角膜炎、悪性黒色腫 - 瞼にできもの(腫瘤)ができてる
・・麦粒腫、マイボーム腺腫
上記のように目やに以外にも、緑内障や腫瘍など早急に動物病院を受診すべき病気のサインが目にあらわれることがあります。
飼い主さんは愛犬の目の状態を日頃からチェックするようにしましょう。
目やにが出やすい犬種とライフステージとは?
犬の中には、目やにが出やすい犬種やライフステージが存在します。
目やにが出やすい犬種は目の病気にかかりやすいことが多いです。
目やにが出やすい犬種とそれぞれに好発する目の病気は以下の通りです。
- 柴犬
・・緑内障、アレルギー - キャバリア
・・白内障、結膜炎 - チワワ
・・角膜炎、角膜潰瘍 - パグ、シーズー、ペキニーズ
・・角膜炎、角膜潰瘍、ドライアイ - コッカー・スパニエル、セントバーナード
・・眼瞼内反(外反)症 - ミニチュアシュナウザー
・ドライアイ - トイプードル、シーズーなどの短頭種
・・鼻涙管閉塞 - ボクサー、フレンチブルドック、コーギー、ゴールデンレトリーバー
・・難治性角膜上皮びらん(SCCEDs)の好発犬種
愛犬が上記の表に記載されている犬種に該当する場合には、目の病気にかかりやすく目やにが出やすい可能性があります。
しかし、異常な目やにや、目の病気はどんな犬種どんな年齢でも起こる可能性があります。
また犬種に関わらず、老犬になると体内の老廃物が多くなり、目やにが多くなる傾向があります。
愛犬の目を日頃から注意深く観察して、少しでも異変があれば動物病院を受診するようにしてください。
犬の目やにと涙やけは違うの?
目やには、体内の老廃物や眼球内の古い細胞などが体外に排出され固まったものです。
それに対して、涙やけとは涙が目の周りの毛に付着し酸化されることで赤茶色や黒色に色素沈着してしまう状態のことです。
どちらも目の周りに起こる病態ですが、目やにと涙やけは違うものですので、区別して考えるようにしましょう。
涙やけが起こる原因としては以下のような3つ原因が考えられます。
- 涙の排泄経路が閉塞している
・・鼻涙管閉塞 - 涙が過剰に産生されている
・・外部からの刺激(逆まつげ、眼瞼内反症)、アレルギー、結膜炎、角膜炎、緑内障 - 涙の質が悪くすぐに流れ出てしまう
・・マイボーム腺機能不全
涙やけの原因についてそれぞれ解説していきます。
①涙の排泄経路が閉塞している
鼻涙管閉塞とは、目から鼻にかけての涙の排出経路である鼻涙管が閉塞している状態です。
愛犬が鼻涙管閉塞になっている場合は、涙がうまく排泄されず眼球から溢れ出し涙やけを作ってしまいます。
鼻涙管閉塞の原因は以下の2つです。
- 鼻涙管の中に何か詰まっている
- 鼻涙管の構造が先天的に曲がっている、細い
涙の質が悪くドロドロの涙の場合は、鼻涙管の中で詰まりやすくなります。
また、パグやチワワ、シーズーなどに代表される短頭種は鼻涙管の構造が生まれつき曲がっている場合があり涙が排泄されにくいです。
鼻涙管閉塞の治療としては、動物病院で鼻涙管の詰まりをとってもらうことが一番の方法です。
涙やけの原因として鼻涙管閉塞が疑われる場合には、一度動物病院に相談してみましょう。
②涙が過剰に産生されている
目に炎症が起こっている場合や、外部から刺激を受けている場合は涙の産生量が上昇します。
その結果、涙が目から溢れ出し涙やけの原因となることが多いです。
原因となる目の病気としては、
- 角膜炎
- 結膜炎
- 緑内障
などの目に炎症をもたらす病気が考えられます。
また、外部から刺激を受け涙が過剰に産生される場合としては以下のような状況が考えられます。
- 逆まつげ
- 瞼の腫瘤
- 花粉症などのアレルギー
このような状況は、動物病院で原因に対する治療を行なってあげれば、涙やけも良くなることが多いです。
目の状態を見て充血していたり、まつ毛が目に入っていたりと飼い主さんが気づけることも多いです。
涙やけが気になる方は愛犬の目をしっかり観察してあげて動物病院を受診するようにしてださい。
③涙の質が悪くすぐに流れ出てしまう
涙の質が悪いと眼球に涙をとどめておくことが出来ず、すぐに流れ出てしまいます。
涙は水分のみで出来ているように見えますが、涙の構成要素には油分も含まれています。
健康な子の目では、マイボーム腺と呼ばれる瞼の分泌腺から油が分泌されて涙がうまく眼球内に留まるようになっています。
しかし、何らかの原因でマイボーム腺から油が出てこなくなると涙がすぐに流れ出て涙やけの原因となってしまいます。
この場合は、点眼薬をこまめにさしてあげ、涙の質をよくすることが大切です。
目やにも涙やけもどちらも目の病気が原因で起こりうる可能性がある状態ですので、飼い主さんは日頃から目の周りをチェックしてみてください。
犬の目やにの対処法
犬の目やにに対処するには、どうすれば良いか悩む飼い主さんは多いです。
犬の目やにの対処法は以下のようなものが考えられます。
- まずは動物病院に連れて行くべきかをチェック
- 動物病院で目薬や内服薬を処方してもらう
- 自宅で優しく目やにを取り除く
- 定期的に点眼をさしたり、トリミングに連れていく
まず、犬の目やにが眼球内の炎症によって起こっていないか、動物病院で診てもらったほうが良い目の状態なのかを上記の章を参考にチェックしてみましょう。
もし動物病院に連れて行く場合は、症状にあった目薬や内服薬を処方してもらいます。
アレルギーで目の周辺を掻く場合は、掻かないようにカラーをつけてあげることが有効です。
自宅で飼い主さんが行えることは、排出される目やにを優しく目やにを取り除いていくことです。
コットンやガーゼなど柔らかい素材のものを使って眼球を傷つけないように優しく目やにを取り除いてあげましょう。
目やにが毛と絡まって硬くなっている場合には、蒸しタオルなどでふやかしてあげるととりやすくなります。
目やにの正しい取り方については、次の章でも詳しく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
最後に、目やにを予防するために定期的に目薬をさしたり、トリミングに連れていき目の周りの毛を綺麗にカットしてもらいましょう。
犬の目やにはこうした予防法によりかなり改善される場合があります。愛犬の目やにを予防してあげて綺麗な目元を維持してあげましょう。
犬の目やにの正しい取り方
目やにの正しい取り方は、大きく3つあります。
- 目薬をさす
- ふやかしてコットンやガーゼなどで拭き取る
- ノミとり用のコームを使う
眼球内に目やにが付着している場合は、目薬をさしてあげることが有効です。
目薬で眼球に付着している目やにを洗い流し、コットンやガーゼで拭き取ってあげましょう。
また、固まっている目やにに関しては、蒸しタオルなどを使って柔らかくしてから拭き取るようにしましょう。
最も難易度が高いのが、目やにが毛に絡まっていてなかなか取れない場合です。
こうした場合には、蒸しタオルでふやかした後、ノミ取り用のコームで優しくといてあげると良いでしょう。
しかし、目やにを取る場合には飼い主さんが注意すべきポイントがあります。
飼い主さんが目やにを取る時には、
- 決して無理に引っ張らないようにすること
- コットンやガーゼなど柔らかい素材を使ってあげて眼球を傷つけないようにすること
の2点に注意して行うようにしてください。
目やにを取る時に痛みを与えると、次回以降なかなか目の周りを触らせてくれなくなる場合があります。
優しくゆっくりと行ってあげるようにしましょう。
まとめ
犬の目やには、生理現象によるものと眼球内の炎症によるものがあります。
眼球内の炎症による目やには、目の病気のサインかもしれませんので、一度動物病院を受診するようにしましょう。
眼球内の炎症による目やにの特徴は以下の通りです。
- 緑色、黄色
- ドロドロ、ネバネバで粘稠度が高い
- 1日に3回以上目やにが出る
- ニオイが臭い
また、目やに以外にも動物病院に連れて行くべき目の状態もあります。
飼い主さんは本記事を読んで犬の目やにについての理解を深め、日頃から愛犬の目をチェックしてあげるようにしてください。
・・目の表面をおおう角膜に傷が入り炎症が起こる。ひどくなると痛みがあらわれる。
・・眼球と瞼をつなぐ結膜に炎症が起こる。白目の部分が充血することが多い
・・眼球を包んでいる強膜、虹彩、毛様体などに炎症が起こる。痛みや充血がある。
・・眼球内の水(眼房水)が貯留するなど、何らかの原因で眼圧が上昇している状態。
眼球のサイズが大きくなっていたり、充血したり、痛がったりするような症状がある。
・・涙の産生量が低下していたり、涙の質が悪くすぐに流れ出たりする状態
・・眼球の水晶体が白く濁っていく。核硬化症と間違えやすいので注意
・・水晶体内の核が凝縮し硬化していく。老化現象なので特に治療はいらない。
・・目の瞼の部分に腫瘤ができる。良性だが大きくなれば破裂し出血することもある。
・・眼球内に黒い点、腫瘤が見える。悪性の腫瘍なので眼球摘出する必要もある。