相続発生時に資産に不動産が。この分け方の一つである「共有持分」登記。
共有持分で不動産を分けた場合、どんなメリットとデメリットがあるのか解説してみました。
共有持分のメリット
相続手続きを迅速に終わらせる事が出来る。
相続税の納付には期限があります。「相続開始を知った日の翌日から10カ月まで」です。それまでに相続の仕方つまり遺産分割協議を終わらせておく事が一般的です。
遺産分割を終わらせていないと「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」などの税額控除を受ける事が出来ません。そのため、いくらで売るかなど意思統一が定まりづらい不動産を共有持分で登記することで迅速に遺産分割協議を終わらる場合があります。
この手続きが迅速に終わらせられるということ、はメリットの一つですね。
完璧に相続権割合で分割出来る。
不動産を相続しようとする場合、誰か一人が不動産を単独で相続し、他の相続人には不動産価格の相続権割合分を金員に換えて整理するという方法があります。
例えば一般的によくある例ですと、兄弟で半分ずつ資産を相続する場合、4000万円分の不動産と4000万円の現金があった場合、兄が4000万の不動産を相続、弟は4000万の現金を相続というケースですね。
この場合で現金が4000万ではなく3000万しか無かった場合は兄は1000万を自分の懐から出して弟に払い、それで不動産を完全取得するなどします。
この場合ですと一見適切に相続が完了しているように思えますが、実はかなり曖昧な部分があります。それは不動産の価値です。
不動産の価値はかなり曖昧です。例えば路線価と呼ばれる不動産の相続税制評価で見ると、実態の相場から3割程度の下方乖離があり、この数字を鵜呑みにすると、本来であれば、5700万程度あった不動産の価値を4000万と見てしまい、上記の例に当てはめると兄の方が1700万も有利な遺産相続になってしまいます。
そのため、不動産鑑定士や不動産業者に依頼し実態の相場に即した価格を出して貰うのですが、これも非常に曖昧で、依頼主が兄であれば相続財産としては安く評価を出し、逆に依頼主が弟であれば高く評価を出します。
つまりは依頼人に取って有利な数字を出すという事です。不動産という一定の価値が定まっていない曖昧な物は恣意的に価格が決まってしまい、完璧な相続へと至らないことが多くあるのです。そのため不動産を1/2ずつ共有持分で兄弟で相続し、現金も半分に分けて相続すれば完璧に相続権割合に応じた分割が可能です。
共有持分のデメリット
共有不動産の売却に全員の同意が必要
共有持分により共有されている不動産を売却する場合、全員の同意が必要になります。
例えば1/10しか持っていない共有者の反対であっても、売ることは出来なく成ります。
実質的に資産がデッドロックしてしまい、持分そのものが不良資産となってしまいます。またこうした特性から意見が分かれた際、共有者間の仲が悪くなってしまうケースが多く、親族トラブルなどに発展しがちです。
共有者が勝手に使用をしていても止める事が出来ない
実家の共有持分1/2を相続したが、同じく1/2を持つ弟が住んでおり、自分は住むことができない……。
こうした場合不動産の利用価値が一気になくなりますよね。ですが一方的に追い出す事も出来ません。
例えばこの状況で自分が9/10持っていて弟が1/10しか持っていなくても追い出す事は出来ないのです。
一応法律的には自分の持分に対する使用料を請求する事が出来ます。例えば周辺の同規模同程度の家賃が10万円なら自身の持分1/2の使用料として5万円ですね。
しかし、この請求を突っぱねられた時は裁判をするしかなく、また「お金がなくてこの金額は支払えない月3万では支払える」など主張されると求める金額での使用料請求を取るという事が裁判的になかなか難しく、安い賃料で和解させられてしまうなどという事も起こりえます。
権利が更に細分化されてしまう事がある。
兄と弟で1/2ずつ共有持分で相続した不動産があるとします。
兄が急死し相続が発生、兄嫁、息子二人で分けたとします。相続権割合に応じた分割をしたとするとこの不動産の共有状況は4/8弟、2/8兄嫁、1/8兄息子、1/8兄娘と一気に権利が複雑になります。
またそこから更に相続が発生して……と持分相続の連鎖が次々と発生すると、共有者が100人以上いる誰が管理者かも分からない不動産と成ってしまいます。
管理されず建物が老朽化、崩落して隣地に倒れるなど賠償金が発生するようなひどいトラブルに発展してしまうことにも成りかねません。
他の共有者から突然訴訟を起こされる場合が有る
他の共有者と共有不動産の管理方針などで折り合いがつかないなどすると、時に民事訴訟を起こされる場合があります。
「共有物分割請求訴訟」「共有物買取請求訴訟」などと言われる訴訟です。
この裁判は共有持分を競売にかける、誰か一人が持分を全て買い取る事で共有状態を解消する訴訟です。
裁判へと発展すると費用をかけて弁護士を代理人として立てるか、自分が被告人として裁判所に何度も赴く必要が出てきます。どちらにせよ負担には変わりません。
共有物分割請求は共有者であれば誰でも出来る訴訟なので、突然起訴されるなんてこともあり得ます。その際は高額な費用と時間を裁判に割くことになってしまいます。
まとめ
上記のような理由から、メリットよりもデメリットが遙かにうわまります。
そのため相続においては共有持分で不動産を共有する選択はしないようにしましょう。
もうしてしまった、トラブルに発展している、どうして良いか分からないなどの相談があればぜひ当社へご相談してみてください。共有持分に対して高いノウハウがあるスタッフがご回答いたします。
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